2017年10月20日金曜日

"Battle of the Sexes”

1973年、女子テニス界でトップクラスのテニス選手ビリー・ジーン・キングと、往年の名選手ボビー・リッグス(当時55歳)が対戦し、”The Battle of the Sexes”と呼ばれた男vs女のエキシビションを映画化した作品。監督は『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサ・・デイトン&ヴァレリー・ファリスで、キング夫人をエマ・ストーン、リッグスを『リトル・ミス・サンシャイン』でも起用したスティーヴ・カレルが演じています。

なぜそんな試合が行われたのか。映画では試合にいたるまでの過程をキングとリッグスほぼ均等に時間を割き、丁寧に描いています。映画から得た印象では、1、リッグスの性格(ギャンブル好きで過剰な自己演出好き)。2、男女同権運動が高まっていた当時の機運の、ふたつが主な要因だったようです。男性選手よりも報酬が格段に少ないことに異を唱え、女子テニス協会を設立したキング夫人は、リッグスにとって格好の標的でした。

2017年10月17日火曜日

"Loving Vincent" 『ゴッホ ~最期の手紙~』

ゴッホの油絵そのままの絵柄で、ゴッホの死の謎に迫るアニメーション作品。

「油絵が動く」ということでハンガリーの油絵アニメーション『英雄時代』('82)を連想しつつ観に行くと、アニメーションと言っても先に俳優を使い実写で撮った映像を下絵に使う、ロトスコープ方式でした。もちろんそれにより、手間のかかる手法のせいで止め絵や単調な構図ばかりの『英雄時代』に比べ、自在なカメラワークや全編が動きどおしという利点を手にしましたが、「人が作った動き」を楽しむという点での満足感は得にくいです。

そのせいか、スクリーンですごいアートが展開していても、なかなか響いてきません。それからやたらセリフが多いです。「動いている」よりも「しゃべっている」印象の方が強く、これをアニメーションだと思って観に来ると痛い目にあいます(ずばり"talking heads"とまで書いているレビューもあり)。とはいえ監督はれっきとしたアニメ畑の方々で、ひとりはあの鮮烈なコマ撮り作品『ピーターと狼』のプロデューサー、ヒュー・ウェルチマン。もうひとりの監督で画家が本業らしいドロタ・コビエラは、『リトル・ポストマン』という世界初の「立体絵画アニメーション」でLA3D映画祭の短編賞を受賞しています。ドロタさんはなかなかの美女で、彼女に惚れて結婚しちゃったウェルチマンが、彼女が暖めていた短編企画を長編作品にしたのがこの映画。「私はなによりも素晴らしいストーリーを語ることに情熱を注いでいる」と強調するウェルチマンを代弁するように、とにかく登場人物たちは多弁でした。ゴッホが描いた人々に血肉を与える、という試みに共感できればスリリングな映像体験ができるのかもしれません。(監督の弁



エンドクレジットの使用曲"Starry, Starry Night"が素晴らしく、歌声は女性だったのですが、作曲がドン・マクリーンとあったので、帰ってから調べたら、この耳なじみのある曲は「アメリカン・パイ」で有名なマクリーンが作った曲だったのですね。しかも、ゴッホの「星月夜」を歌ったもので、本当の題は"Vincent"だというではないですか。いや、勉強になります。

出演俳優のなかに、クリス・オダウドとシアーシャ・ローナンがいたのもうれしいおまけでした。本編が始まる前の予告編に、シアーシャの新作"Lady Bird"がかかったのですが、自分でもビックリするぐらい、シアーシャを見ているだけでしあわせな気持ちになりました。

"Lady Bird"予告編
母親に「あなたにはあなたの最高のバージョンになって欲しいの」と言われ、
「これが最高のわたしだったらどうする?」と返すシアーシャ🐞

というわけで、いろいろと発見のあった実験作でした。








どうせならこの人を動かして欲しかったな…。

「火のついたタバコをくわえた骸骨」byゴッホ




2017年9月17日日曜日

“The Eagle Huntress“ 『イーグルハンター 1000年の歴史を変えた「鷹匠」少女』

モンゴルに住むりんごのほっぺの少女が、鷹匠を目指すドキュメンタリー。
女の子が鷹匠になるのはモンゴルでもはじめて。
鷹匠組合の偉い人みたいなおじいさん達が、口では「女が鷹匠なんて許さんけぇ」といいながら、別にアイショルパン(女の子の名前)が大会に出るのを反対もせず、ちゃんと評価してあげるのがいいな。アイショルパンはじめ、みんなおっとりしている。カザフ人だそうです。

鷹の訓練に死んだウサギをずるずる引きずったり、雪山でキツネを狩らせる場面は、先日”PAX”というキツネの物語を読んだばかりなので、キツネに肩入れしてしまう。でもキツネ対イヌワシの闘い、見ものです。

デイジー・リドリーがナレーションをしているよ。

イヌワシもモフモフだけど、アイショルパンたちの帽子もモフモフ。
イヌワシをドラゴン、アイショルパンをデナーリスに見立てて『ゲーム・オブ・スローンズ』ごっこもできるよ。


関係ないけど"PAX"という児童書。
キツネと男の子の切ないおはなし。
邦訳があるのか知らないけど、よかったです。

2017年8月5日土曜日

"Dark Tower"『ダークタワー』

スティーブン・キングファンの集う(?)先行上映で観てきました。
予告編の、ガンスリンガーが銃を横に振ると銃弾が装填されるという荒唐無稽なガンアクションにしびれて、悪評をものともせず観に行ったのだけど、評判通り、generic(凡庸)なSFファンタジーアクションに終始していました。

原作冒頭の、黒衣の男を追って荒野をさすらうガンスリンガーという映画的においしい絵柄を、なぜ捨てるかな? 残念なのは、例のガンアクションシーンも、本編で観るより予告編で観る方が印象的だったこと。

あとジェイク少年のユニークな出自も変えちゃって、1巻でローランドが下す胸熱な決断もありませんでした。キングに詳しい方ではないけれど、「ファイアースターター(炎の少女チャーリー)」のように、子どもと男の不思議な絆みたいなのを描くの、うまいですよね。

まあレビューで散々な言われようしていますが、ガンスリンガー役にイドリス・エルバを抜擢したのだけはお手柄、と口々に褒めています。

ロン・ハワードら制作陣が、今一番コワモテな俳優を探して、エルバで意見が一致したそうです。キングは「荒野の決闘」のクリント・イーストウッドをイメージして執筆したとか。エルバはイギリス人で、トークショーにゲスト出演したとき、銃ならぬ紅茶のカップを手に登場してました😄

なんかボヤッとした仕上がりになったのは、二つの製作会社が同等の発言権を持ち、さらにキングもダメだしをする権利を持っていたため3すくみになってしまったせいのようです。おかげで事前プロモーションもろくにできなかったのだとか。

来年、テレビシリーズが始まるみたいなので、そちらに期待したいです。

2017年7月18日火曜日

"The Founder" 『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

スパイダーマン:ホームカミング』のマイケル・キートンが鮮烈だったので、ちょっと前に公開された彼の主演作『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』のDVDを借りて、観てみました。

邦題通り、マクドナルド創業秘話です。
キートンが演じるのは、レイ・クロックというセールスマン。ドライブインレストランにミルクシェイクのミキサーを売り込んで回るが、ちっとも買い手がつきません。そこへ、1度に8台ものミキサーを注文する店が現れます。半信半疑でカリフォルニアにある店の視察に赴いたレイは、マクドナルドというハンバーガー・レストランの、徹底して効率化を図った画期的なシステムを目の当たりにし、天啓を受けます。渋る兄弟を説得して、フランチャイズ権の契約を結んだレイの、猪突猛進が始まる…。

2017年7月14日金曜日

“Spider-man: Homecoming”『スパイダーマン:ホームカミング』

ここ数年、ヒーローものはあまり観なくなったので、映画の冒頭で面食らいました。

ピーター・パーカーはもうスパイダーマンになっていて、なぜかジョン・ファヴローのお守りがついていて、ほかのヒーローたち(アベンジャーズ)と一緒に模擬戦をしています。
一方ニューヨークでは、なんだかテーマパークのアトラクションのようなデザインの構造物を解体する作業員たちが、政府の役人(トニー・スタークがバックについている)からお役御免になります。作業員の親分をマイケル・キートンが演じていて、「エイリアンの遺物を利用してやる」と、スタークら「1%の富裕層」への復讐に燃えます。つまり、解体しているのはエイリアンのものであり、この映画はエイリアンが地球に攻めてきて、追っ払ったあとのお話のようです。

2017年7月7日金曜日

"Cars 3" 『カーズ/クロスロード』

やはりこういうのは映画館の大きなスクリーンで観る方がいいだろうということで、Cinema9で鑑賞。

公開3週目ぐらいの午前11時の回で、お客さんはあともうひとりだけ。座席指定するときは真ん中後方の一番いい席がいくつか埋まっていたのに、変なの。

とてもおもしろかったです。
映像も、ストーリーも、素晴らしいです。 時々実写と見まごいます。
そして人生下り坂の人間にとって、グサグサ来ました。映画のターゲットである子供や若者、「負けたことのない人(by『そして、父になる』のリリー・フランキー)」にはピンと来ないでしょうに、それを百も承知で作ったに違いない、ピクサーのクリエイター魂に敬服です(辛い評価をしている映画評論家は、きっと勝ち組なのでしょう)。

2017年7月2日日曜日

“47 METERS DOWN”『海底47m』

夏にピッタリ、海洋ホラー。

マンディ・ムーアとクレア・ホルトの姉妹がバカンスに訪れたメキシコで、現地で知り合った二人のイケメンに誘われてケージ・ダイビングに挑戦する。くたびれた小さなボートで沖に出ると、イケメンたちが先に檻に入り、安全に水中でのサメ鑑賞をエンジョイした後、ふたりの番が来る。さびさびの檻に不安を隠せない二人に、船長のマシュー・モディーンは「大丈夫。いったん海中に入ったら出てきたくなくなるから!」と保証する。その言葉通り、最初はサメたちの泳ぐ姿にはしゃぐ姉妹だったが、檻につながれたケーブルが切れてしまい、47メートルの海底に落ちてしまう。サメの徘徊する海中から、酸素ボンベのタイムリミット内にふたりは浮上できるか!?

マシュー・モディーン(『ストレンジャー・シングス』『バーディ』『フルメタル・ジャケット』)のファンなので観に行きましたが、堂々たるチープなB級ホラーを楽しめるかどうか半信半疑で、さびさびの檻に入る姉妹さながら不安な気持ちでした。

でも、面白かったです。大胆な行動派の妹に比べ慎重派の姉は「退屈だから」とカレに出て行かれ、傷心を癒やすために来たバカンスで柄に似合わず冒険する、という設定も薬味がほどよく効いていました。

音楽がお久しぶりのトマンダンディ(ルトガー・ハウアー主演『MR.STITCH 悪魔の種子』)。

似たようなプロットの『ケージ・ダイブ』とは別物なので要注意!

いちおうダイビングの経験はあるけれど、水深47メートルの恐怖がいかばかりのものか、ちょっと想像つかないなあ。自分だったらそれだけで恐怖のあまり死んでしまいそうだ。

トーク番組に出たときにマンディ・ムーアが説明していましたが、撮影は深さ5mぐらいのタンクで行い、海底感を出すために水を濁らせたそうです。ずっと水の中に浸かっているので、どうしてもおしっこ出ちゃうんですって。😅 ほんとに水中での演技、大変そうです。マシュー君も二人の主演女優の女優魂を讃えていました。

2017年7月1日土曜日

"Baby Driver"『ベイビー・ドライバー』

『ショーン・オブ・ザ・デッド』のエドガー・ライト脚本・監督による、凡百の犯罪アクションとは一線を画す作品。

主人公のベイビーは、『ドライブ』のライアン・ゴスリング同様、犯罪者たちを犯行現場から警察の追跡を振り切ってゲッタウェイさせるドライバー係をしています。どんなときもイヤホンをはめて型落ちのipadから音楽を聴いているのは、子供の時に遭った交通事故で耳鳴りに悩まされるようになったから、という設定。

映画冒頭の、BGM(=ベイビーが聴いている曲。この時はジョン・スペンサー・ブルーズ・エクスプロージョンの「ベルボトムズ」)にピッタリとアクション&カット割りのタイミングを合わせたカー・アクションが、爽快この上ないです。ベイビー(アンセル・エルゴート)は文字通りベビーフェイスで口数も少ない一見人畜無害そうな若者ですが、いったんハンドルを握ってアクセルを踏んだら、誰にもnonstoppableな天才ドライバー。

2017年6月12日月曜日

"The Mummy"『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』

公開後初めての週末に観に行きました。

興行成績では『ワンダーウーマン』に惨敗と報じられていますが、客席は老若男女で賑わっています。結構お年寄りも多いのが意外。えーと、往年のモンスター映画を懐かしんで? トム・クルーズファン!?  私たちの隣りに座ったのも元ヒッピー風の60年代風の人で、ここの劇場グループが上映前にかけるジェットコースターを模したスポットで、両手を挙げるノリの良さ😀

"wrapped in plastic"のトム・クルーズが死体安置所で息を吹き返すシーンでも、「ひゃあ!」みたいなすっとんきょうな声をあげて、それまで息つく間もなく展開するスクリーンに魅入っていた観客たちもそれに反応してクスクス笑いが波のように起きて(だって予告編でやってたじゃない! この人は映画ビギナーなのか!?)、私たちの前席に座っていた「上映中のおしゃべりは他のお客様の迷惑になります」スペイン語娘三人組に笑いの発作が起きちゃって、しばらくキャハキャハ笑っていました。こういう映画は大勢の観客たちと映画館で観るに限りますねー!

簡単なあらすじと書こうと思ったけど、まあいいかな。みんな知ってるよね。
トム・クルーズはトム・クルーズ役で、ミイラは『キングスマン』の足が凶器になってたソフィア・ブテラで、クルーズのサイドキック役がテレビ『New Girl』のジェイク・ジョンソン。ラッセル・クロウが秘密組織のボス役ですが、こういう、「超常現象(たいてい歴史ミステリーに材をとる)のからむ事件を扱う政府の息のかかった秘密組織」みたいのが大流行りですね。小説の世界もしかりで、それがまたよく売れているそうです。

本編はユニバーサル・ピクチャーズが立ち上げた「ダーク・ユニバース」の第一作。今後も活躍できるように、トム・クルーズは(→ネタバレなので白字に)死の神セトと合体してデビルマン化します。

鑑賞後、監督のインタビューを読みましたが、トム・クルーズの動きがすっかり「うる星やつら」のテンちゃんだった水中シーンは、なるべくCGにしないで、生身の人間たちで撮ったそうです。おかげで生々しかったけど、その代償がテンちゃんなのはどうだろう。



2000年代に制作されたブレンダン・フレイザー主演のミイラシリーズ、『ハムナプトラ』。
第三作のノベライズ翻訳が、はじめて訳した小説です。秦の始皇帝っぽい役でジェット・リーが出てました。これの主人公のコメディタッチ、巻き込まれ型タイプが本作でも踏襲されています。