2009年7月31日金曜日

"Public Enemies"『パブリック・エネミーズ』

[鑑賞日: 7/08/09]

"Public Enemies"を観ました。マイケル・マン監督、ジョニデ主演。

<ネタばれあり! まあ実話なんだけど>

有名な実在の銀行強盗、ジョン・デリンジャーのお話で、相当史実に忠実らしいです。どのくらい忠実かというと、有名な「赤いドレスの女」は、実は赤ではなくてオレンジのスカートをはいていたそうで、映画でもそういう描写になっていて、ロジャー・エバートが「そこまでしなくてもいいじゃん」とガッカリしていま した。
 さて、今回この映画はSony Cinealta F23HDというHDカメラを使用していて、業界はその点に大注目しています。HD撮影など今どきめずらしくないだろうに、なぜかよく分からないんです が、フィルムの質感がなくなり、非常にリアルで体感的な、今までにない映画体験を観客は味わうだろうと、なんか革命的な事態のように、複数の評が書いてま した。確かに、非常に画質がクリアで、特に、夜の銃撃戦シーンに、その威力が遺憾なく発揮されていました(その分、映画館のスクリーンのボロさがばれてい た)が…。それよりも、トーシロは、$150,000.00というカメラのお値段にビックリです。"American Cinematographer"誌によると、マン監督は最初はフィルムがいいと思ってたのですが、フィルムとデジタル同時にテスト撮りをしてみたら、特 に夜のシーンの鮮明さで、デジタルに軍配が上がったんですって。

そういう周辺事情はともかく、ジョニデがすごくカッコ良かったです! 基 本的にデリンジャーは、何か深い事情があるわけでもなく、ただそこに銀行があるから、みたいな感じで銀行を襲い金を奪う、非常にシンプルな犯罪者として描 かれており、でもヤマに当たるときは彼なりの規範で効率的に動き、不必要な暴力はふるわずはした金にも手をつけないため、大衆にはちょっとした人気があ る。ギ ロッってにらみを利かせると凄みがあって、スマートな強面って感じです。映画の最初の方、彼女(エディット・ピアフ役で賞もらったフランスのマリアンヌ・ コテヤール)と のなれそめのくだりは、なぜかコートが意味深な使われ方をしていて、寒がるビリー(彼女の名前)に自分のコートをかけてあげるのですが、その前のヤマで、 人質に取ったお嬢さんにやっぱりコートをかけてあげる一幕がありました。それから、デリンジャーを追うGメンのパーヴィス捜査官(クリスチャン・ベール) が、デリンジャーの手がかりをつかむのが、どこからか入手した彼のコート。そして、クロークをしている彼女の職場へやって来たデリンジャーが、「俺の女に なれ!」と迫り、「あなたのこと何も知らないもの」と鼻白まれると、「なんとかとかんとかと野球となんとかが好きで、お前が好きだ。他に知りたいこと は?」 とたたみかけます(「ありませんっあなたについてきます!」っ て、女性の観客全員と一部の男性は思ったに違いない)。その間に、服を預けていた男が「ちょっと、僕のコートは!?」ってうるさく口を挟むもんだから、 強面デリンジャーはそいつに一発お見舞いしちまいます。いい災難だ。ある評では、デリンジャーは映画ファンで、クラーク・ゲーブル気取りだったみたいで (実際、映画のクライマックスで、彼が映画館で観る映画がゲーブルの「男の世界」。男の世界って、マイケル・マン映画そのものじゃん)ジョニデは役作りを 半分デリンジャー、半分ゲーブルから借りてるって書いてありました。ジョニデ最高の演技とか、グレタ・ガルボ的な要素を持ってる役者だ、とか激賞されてる ので、いくつかの賞にノミネートされるかもしれません。 ただ、東宝のマスコミ向けメールによれば、洗練された立ち振る舞いで「FBIのクラーク・ゲーブル」と呼ばれてたのは、メルヴィン・パーヴィス捜査官の方 だそうですが。とまれ、全編強面(ニヤリと片頬を上げて笑うジョニデのアップがカッコいい!)のデリンジャーが、ビリーをFBIの鼻先でかっさらい、 久しぶりに再会したときに、すごくうれしそうに、片頬じゃなくて、両ほおで笑うんですが、それがすご〜くかわいくて胸キュンでした。デリンジャーがビリー を見初めた時、彼女が着ていたのが深紅のドレス。男を破滅させる魔性の女、「赤いドレスの女」とは、ビリーのことだったなりよ。

あ と映画がこだわってたのが、デリンジャーの仲間や、FBI側の誰かが撃たれて倒れる度に、息をひきとるまで、しつようにデリンジャー、パーヴィ ス、またはカメラがジーッて看取るんですよ。捕まったデリンジャーの顔を見に来たパーヴィスに、デリンジャーは「あんたは目の前で人が死んでいくのに慣れ てるか?」って聞くんですよね。そういうところひとつ取っても、既製のギャング映画とはかなり毛色が違います。

ジョニデのピカレスク 振りは見ものだし、とても面白く観られたし、アクション場面もすごく迫力あったし絵作りも申し分ないですが、映画が巧妙に作られていればいるほど、観てる 間中、「マイケル・マンは何がいいたくてこの映画を作ったんだろう?」ってずっと疑問でした。私がアクション映画ファンじゃないせいかなと思ったんです が、すごく褒めている評でも、「でも何かが足りない」と書いてるのが2本ほどあったので、あながち的外れな印象でもないの でしょう。

ジョ ニデも眼福だったけれど、パーヴィスの部下の一人に凄い腕のたつ、しぶい金髪の男がいて、そいつの存在感が、中盤から徐々にジワジワ増していきます。デリ ンジャーがどの映画館に行くかを当てたのもそいつで、そしてデリンジャーを仕留めたのが、パーヴィス(彼自身も冷酷なハンター)ではなくそいつで、映画の ラストシークエンス、そいつがビリーに面会に行くのですが、そのシーンと、ビリーの涙で、なんだかそれまでのモヤモヤが、スーッとカタルシスとなって消え て行きました。女の涙は凄いねっ。目千両じゃなくて涙千両だ。最後にテロップで、読み違いでなければ、その1年後ぐらいに、FBIを辞めたパーヴィスは自 殺したって書いてありました。自分 で獲物を仕留められなかったことが尾を引いたのかなあ。クリスチャン・ベールも超売れっ子ですね。

後で映画雑誌をナナメ読みしたら、マイケル・マンが、「僕が興味があったのは、デリンジャーの心理、何が彼の行動を駆りたてたのかだ」って言ってました。

関係ないけど、ジョニデとデリンジャーってイニシャルが同じだ。JD。

0 件のコメント: