2009年10月8日木曜日

"Capitalism: A Love Story" 「キャピタリズム 〜マネーは踊る〜」

ベネチア映画祭でも話題を振りまいていた(&割といい評価)マイケル・ムーア待望の新作、「Capitalism: A Love Story」を観ました。

私はあんまり英語の聞き取りが得意ではないので、字幕なしでドキュメンタリーを観るのは正直しんどいのですが、この映画の構成自体は、とてもスッキリと、よくまとまっています。最初に、セキュリティカメラに映った銀行強盗たちの映像をモンタージュで見せ、「大企業の金持ちたちがこれと同じことをやっていますよ」といいたいのだな、とセリフなしで伝えてくれるので、助かります。つまり、ムーアの映画は、大衆向けに、分かりやすく作ってあり、決してインテリさん向けではないのです。

で、本作で何を学んだかというと、資本主義とか、今回の経済危機の原因についての新しい知識とか見方よりも(そういうのは、ちゃんとニュースをある程度見聞きして、メディアリテラシーがある人ならば、この映画にでてくることはさして目新しくはない。それでもすごくよくリサーチしてあり、うもれていた事実なども明かされていますが)、マイケル・ムーアについての理解が深まりました。

彼は、骨の髄までアメリカンな考え方と行動様式を持つ男。そして、すごい愛国主義者です。なにより、自分の地元が大好き。たいへん大きなテーマを扱っていても、彼の目と心は、地元ミシガン州の町、GM社のお膝元フリントから、一歩も動きません。取材相手も半分が、彼の身内や知人や同郷の人でした。どこまでも、庶民目線、フリント住民目線を貫いています。もっとジャーナリスティックに、こういった問題を理解したいと思ったら、CBSの「60ミニッツ」とか観る方が、きっとタメになる。

さて、本編中いちばんショッキングだったのが、世界最大のスーパーマーケットチェーン、ウォルマートが、自分の従業員に保険をかけ、もし若く有能な社員が死亡した場合、同社は大きな損失を被ったとみなされ、多額の保険金を得るというシステム。でも、遺族にはビタ一文払わないので、働き手を亡くした遺族は困窮にあえいでいるのです。この保険の存在を知ったときの、遺族の人たちの顔……。そして、この保険の呼称が、「Dead Peasant(死んだ小作人)」。うーん、なんか今のアメリカで、吸血鬼映画やTVドラマが大流行なのが、分かる気がする。いるわ、吸血鬼。今ではさすがにその呼び方だけは止めたそうですが。

あと、すごくシンプルにいうと、映画の中で、レーガン(とブッシュ)大統領が悪の根源、大企業の味方なのに対して、フランクリン・ルーズベルト(とオバマ)大統領が正義の人、庶民の味方という二極的な構図になっています。FDRが、「Second Bill of Rights」をモノクロの映像で読み上げる内容が、とても理想主義的で、印象的でした。もしこれが、実現していたら……(ルーズベルト大統領の死によって、実現しなかったのだそうです)と、マイケルは訴えたいのでしょう。もしゴアが勝っていたら……。もしオバマが勝っていたら……。(最後のは実現したので、オバマがんばって欲しい。道半ばの死に注意だ)

あまり目新しい事実などが提示されない前半は、ちょっと退屈。でも、後半、「分かった、分かった、今の資本主義とアメリカが、すごく間違ってるのは分かった。でも、じゃあどうしたらいいわけ? 解決策は? 社会主義? (ペイリンはオバマの国民皆保険制度を「すごく社会主義的に聞こえるわ!」と言ってました) そうなの?」って思いながら観ていると、マイケルはずばりいいます。「民主主義が答えだ」、と。

前の座席に、年配のご婦人がひとりで座っていたのですが、いかにも感に堪えない、我が意をいたりというように、映画を観ながらブツブツ同意したり、驚いたり、ミニ感想を言っているのが、おもしろかったです。わたしもそういうことができるぐらい、100%聞き取れたらなぁ。

0 件のコメント: