2009年10月31日土曜日

"A Serious Man"「シリアスマン」

「ファーゴ」、「ノーカントリー」の、コーエン兄弟最新作です。
コーエン兄弟はユダヤ系だそうで、1967年のミネアポリスのユダヤ系コミュニティを舞台にした本作は、彼らの少年時代に基づいた、今までで一番パーソナルな作品、と言われています。

まず、プロローグで、ある夫婦の元へ死霊(dybbuk)が訪れるというユダヤの民話の体裁を取った寓話が語られます。

本編の主人公ラリーは物理学の教授で、目下の関心事は大学の終身在職権の審査をパスすること。ところが、ある日帰宅すると、妻から「別れて欲しい」と告げられます。それを皮切りに、韓国の留学生からは、落第するから成績を上げて欲しいと懇願され、賄賂を送られた挙げ句に脅迫され(この学生のミニマル英語がすごく可笑しい)たり、居候の弟が警察沙汰を起こしたり、大学に匿名の中傷レターが届いたり、好戦的な隣人に庭を浸食されたりと、災難が雪崩をうってラリーに襲いかかってきます(ユダヤ教に通じている人が見ると、ラリーに「ヨブ記」のヨブを重ね合わせるらしいです)。

ラリーは襲ってくる不幸に抵抗しません。家を出てけといわれりゃ出て行くし、妻の浮気相手の葬式を出してくれと言われれば出してあげます。自分ではどうしていいのか分からなくなったラリーは、3人のラビ(ユダヤ教の宗教的指導者)に相談するのですが、どのラビからも、なぐさめや解答は得られません。例えば二人目のラビは、患者の歯の裏に、「助けて!」とイディッシュ語で掘られた文字を発見する歯医者の話をするのですが、ラリーの相談事とはまったく関係なかったり、といった具合。

まあ、不条理コメディなのですが、批評家からの評価は、たいへん高いです。

ラリーには息子と娘がいて、ときどき、ラリーの話から離れて、息子の状況が語られます。親子は断絶していて、二人の事情は終始平行線なのですが、息子のバルミツバーで交錯し、それを機にラリーの状況、息子の状況ともに、好転する兆しが見えます。二人が通じ合うとか、そういう訳ではありませんが…(そもそもラリーは親子が断絶していることに気がついてません)。

映画の中で、ラリーの周囲にいる人物が何名か死にます。その一人が、冒頭の寓意に出てくるdybbukよろしく、ラリーの夢に現れ、悩ませます。私には、冒頭の寓意部分が一番面白かったです。あと、予告編が最高クールでした。

ところで寓意では、dybbukが明確にそうであるとは言っていません。もしかしたら生身の人間かもしれない、というぼかした終わり方をしているのですが、クレジットで、役名が「dybbuk?」になっていました(^_^)。 あと、「映画の中でユダヤ人は一人も傷ついていません」と表記されていて、クレジットまで残っていた人たちの笑いを取っていました(^_^)。


★予告編は必見!

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