2009年10月21日水曜日

"Where the Wild Things Are(かいじゅうたちのいるところ)"


モーリス・センダックの有名な絵本「かいじゅうたちのいるところ」を、「ジョン・マルコヴィッチの穴」「アダプテーション」のスパイク・ジョーンズが映画化しました。

半年ほど前でしたでしょうか、スチル写真や予告編が少しづつ出回りはじめ、それらを目にしたときから、公開を楽しみにしていました。ときどき、「これを観るまでは死ねない!」って思う映画がありますが、これもそんな一本でした。原作は未読だったので、センダックのファンだったわけではありませんが、何より映像に心奪われました。スチルを観たときは、てっきりかいじゅうたちはCGだと思ったのですが、予告編を観ると、着ぐるみっぽい。2,3度予告編を観て、たぶん着ぐるみに、表情だけCGで加工したんだろうと当たりをつけて、公開日前日にメイキング本を買いこんで確認すると、やはりそうでした。着ぐるみはジム・ヘンソン工房が作り、最初は目や口がうごくアニマトロニクスの頭部だったのですが、あまりに重すぎるので、止めたそうです。



それにしてもかいじゅうたちの着ぐるみ、とてもよく出来ています。主人公のマックス少年が着ている狼の衣装も、ヒゲもしっぽも付いていて、超ステキです。ハロウィーン用に売ってないかな…。

原作絵本も本屋さんで立ち読みし(わずか10センテンス、338ワードなので英語でも数分で読めます)、予習もバッチリこなし、公開当日、16日の午後2時の回に観ました。さぞや場内はチビッコたちでにぎやかだろうと覚悟していきましたが、若者や大人も結構います。私の隣には、カゴに入った赤ちゃんが……(^_^;) 君も観るの? 案の定途中で泣き出してしまい、若いお母さんがカゴを抱えて退場しましたが。

映画は、冒頭のワーナーブラザーズのロゴに、落書きが被さって、始まります。スパイク・ジョーンズの作品集DVDのタイトルシークエンスも似た感じでしたが、本作の落書き犯はマックス。Max, Maxって落書きしていきます。犬を追いかけたり、庭で一人遊びをしたり、お姉ちゃんのBFたちと雪合戦したりと、やんちゃに無邪気に遊ぶのですが、合戦中に自慢のイグルーを壊されて、泣きべそをかきます(まだ9歳だからね)。腹立ち紛れに姉の部屋をめちゃくちゃにするのですが、すぐに寂しい気持ちになって、母親(キャサリン・キーナー)と一緒に後始末します。学校では、科学の先生が、「太陽だっていつかは燃えつきてしまうんだ」とこともなげにいって、子供たちを落ち着かない気持ちにさせます。仕事と子育てに忙しいシングルマザーの母親を気遣って、おかしなロボット風の踊りをしておどけてみせる優しい一面もあるけれど、マックスは怒ると手がつけられなくなります。その晩も、言い争いのはずみに母親を噛んでしまい、雨の中、家を飛び出すマックス。小舟を見つけ、船出したマックスは、やがて島にたどりつきます。そこは、かいじゅうたちがすむ島でした——。

絵本では、自分の部屋がジャングルに変わって、そこから船出もするようになっていますが、安易にCGでそれを再現しないで、ジョーンズは本当に偉いです。もしかいじゅうたちがCG製だったら、彼らを観るたびに、胸がキュンとなったりはしなかったでしょう。わずか10センテンスの絵本を映画化するに当たり、ジョーンズ(彼はデイヴ・エガーズと共同で脚本も担当しています。"Away We Go"のエガーズをパートナーに選んだのはジョーンズ自身)は怪物たち一人一人に名前と、個性を与えます。かいじゅうたちの住む島は、オーストラリアでロケ撮影されました。島でのできごとは、島に着く前にマックスが経験した出来事と、ひとつひとつ呼応します。

映画を観た後、レビューをいくつか読んでみました。ほめている人たちは、べた褒めしています。熱狂的と言ってもいいくらい。少数派ですが、全然評価していないレビューもあります。多分その境目は、映画の最初の方で、マックスを好きになれるかどうか、共感できるかどうかにあるように思いました。あと、昔やんちゃな男の子だった人の方が、昔おとなしい女の子だった人の方より、この映画により感情移入できるかも知れません。私? 私はね−、今でもかいじゅうたちそのものですねー。Don't go, I eat you up。でも、子供たちがこの映画をどう思うか、聞いてみたいです。

センダックは、今年81歳。原作を書きあげた当時(1963年)、関係者は誰も評価してくれず、首を振る者ばかりだったそうです。いわく、子どもには暗すぎる、怖すぎる、主人公が悪い子過ぎる、お母さんの子どもへの接し方もおよそ良い見本とはいえない……。出版後も図書館で禁書になったりし、2年後にやっと、評価されるようになったのだそうです。ジョーンズとセンダックはすぐに打ち解けて、映画をパーソナルなものにするよう、ジョーンズにアドバイスしたとか(かいじゅうの何人かは、ジョーンズのおばさんとか、身内がモデルらしいです)。ジョーンズは、子ども向けの映画を作ろうという気持ちはまったくなく、「9歳の子どもでいるのはどんな感じなのか」を描こうとしたのだそうです。かいじゅうたちの会話は、カサヴェテス映画を参考にした(そら子ども向けとは言えないわな)というジョーンズは、映画学校も、大学も出ていないし、ハワード・ホークスやジョン・フォードの映画を観たこともないそうです。

今年は、「コラライン」「空飛ぶカールじいさん」そして本作と、子ども向けの映画がとんでもなく豪華な年になりました。

●ディズニーが3DCGの開発をしていたころのジョン・ラセターによる「かいじゅう」映像



●知人の原型師、山脇隆氏が原型を担当されたジュディス&ダグラス


こちらやAmazon.comとかでも買えます!
☆山脇氏のHPは以下へ。ゴジラがご専門



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