2009年11月13日金曜日

"The Damned United"「くたばれ!ユナイテッド -サッカー万歳!-」

英国サッカーの実在した名監督、ブライアン・クラフについて描いたイギリス映画です。

クラフを演じるのは、「クイーン」ではブレア首相、「フロスト×ニクソン」ではフロストを演じたマイケル・シーンです。同2作の脚本をものしたピーター・モーガンが、本作でも脚本を担当、監督は「第一容疑者6」など、主にTVシリーズを監督してきたトム・フーパー。ちなみにモーガンは、クリント・イーストウッド監督の次回作"Hereafter"の脚本を務めています。

1974年、クラフはリーグのトップクラブだったリーズ・ユナイテッドの監督に就任する。チームをトップに押し上げた名監督、ドン・レヴィを跡を継いでのことだった。だが、リーズは実はクラフにとって、憎っくき因縁のクラブであった。


60年代後半、2部リーグの底辺にいたダービー・カウンティ(羊のクラブシンボルがかわいい)の監督だったクラフは、花形クラブ、リーズ・ユナイテッドをホームに迎える準備に余念がなかった。みすぼらしい競技場を少しでも見栄え良くしようと、線を引き直させ、掃除婦にハッパをかけ、自らプレートをみがき、シャワールームに新品のタオルとオレンジを備え、あこがれの人、ドン・レヴィ(ひさしぶりのコルム・ムーニー!)とゆっくり談笑しようと、ピカピカにみがいたグラスとワインを用意する。だが、チームを従え、毛皮のコートに身を包んで颯爽と登場したレヴィは、クラフの差し出す右手を無視して通り過ぎてしまった。試合も、リーズのラフ・プレーの前に破れてしまう。その後、クラフ率いるダービーは1部へ昇格し、リーグ優勝まで果たす。だが、何度か重要な局面で、リーズのラフ・プレーにコテンパにされてしまうのだった。クリーンな試合が身上のクラフには、リーズ(と握手してくれなかった)レヴィは、目の上のたんこぶ以外の何物でもなく、リーズの監督を引き受けたのも、一種のリベンジだったのかもしれない。

クラフは監督として優秀であったかもしれないが、ひどい欠点があった。それは、口が悪くて感情のコントロールができないこと。それまでは、相棒のピーター・テイラー(アゴなしティモシー・スポール)が、その欠点をうまくカバーしてくれていた。だが、クラブのオーナー(ジム・ブロードベント)と口論したクラフが、テイラーが病気で不在中に、勝手に辞任願いを出してしまう。まさか受理されるはずがないと高をくくっていたクラフだったが、いうことを聞かないクラフに辟易したオーナーたちは、クラフとテイラーに暇を出す。そんな2人を温かく迎えたのは、海辺の町、ブライトンのクラブだった。だが、「こんなほとんどフランスみたいなところはヤだ!」と不満タラタラだったクラフは、直後のリーズからの誘いをホイホイ受ける。テイラーは、ブライトンに残った。
もうひとつ、クラフには悪い癖があって、それは名声欲に弱いこと。リーズ就任直後、TVに出演したクラフは、リーズのラフ・プレーを貶める発言をし、今やイングランド代表監督となったレヴィや、リーズのメンバーたち(見るからに、「かいじゅうたちのいるところ」のかいじゅうたちなみにむさくて荒っぽそうなおっさんたち)を敵に回してしまう。クラフとチームは敵対関係のまま、シーズンが始まり、リーズは負け続けの最低のスタートを切ることとなり、わずか就任44日にして、クラフはお払い箱になる。なんでもイギリスで「44日」といえば、このクラフのリーズ任期のことだと、誰もが分かるほど、有名な逸話なのだとか。

とても評価は高いです。普通のスポーツ映画とは逆に、トップの座にいたチームをどん底に落とすクラフのアンチ・サクセスストーリーや、レヴィとの確執を、シェイクスピアの悲劇になぞらえる評もあります。誰かの評で、シーンがこれまで演じてきた実在の役柄に共通点を見いだして、どれも、老獪な先達に、行く手を阻まれるルーキーだという指摘が、なるほどと思いました。

最近、ちょっと、似たような経験をしたもので(スケールはうんと小さいんですが)、墓穴を(2度も3度も)掘ってしまったクラフのにがーい気持ち、すごく良く理解できます。でも、クラフ、この大きな挫折の後、かなり予想外の行動に出ます。クラフには、テイラーという相棒がいて、良かったなぁ。2人の名コンビぶり、「恋女房」という言葉がピッタリ。里中君とドカベン級、いやジョーと段平級です(スポーツ苦手なので、実例が思いつかない…(^_^;))。もうほんとラブラブのアツアツですから。ラストも恋愛ものの、定石を踏襲してますヨ♡。


本作は70年代のイギリスサッカー界が舞台ですが、80年代のプレミア・リーグを舞台にしたのが、ニック・ホーンビィの名作「ぼくのプレミアライフ」。電気羊の唯一の字幕仕事作です。本作に負けず劣らず面白いよ。観てね。

0 件のコメント: