2009年11月30日月曜日

"Fantastic Mr. Fox「ファンタスティック・ミスター・フォックス」"


農場から家畜を盗むのが生業のキツネと、彼を捕まえようとする3人の農場主の攻防を軽妙に描いたコマ撮りアニメです。

ロアルト・ダール(「チャーリーとチョコレート工場」「ジャイアント・ピーチ」)の児童書「父さんギツネバンザイ」を、「ロイヤル・テネンバウムズ」のウェス・アンダーソン監督が映画化しました。主人公の父さんギツネ、ミスター・フォックスの声をジョージ・クルーニー、ミセス・フォックスをメリル・ストリープ、息子のアッシュをジェイソン・シュワルツマン、弁護士のアナグマをビル・マーレイ、農場主のビーンをマイケル・ガンボン、用心棒のネズミをウィレム・デフォーが当てています(最後のクレジットで、デフォーのところで笑いが起きていました(^_^))。オーウェン・ウィルソンもちょい役で出ています。



ウェス・アンダーソンとストップモーション・アニメの相性がこんなにいいなんて、まったく想定外でした! むしろ、予告編を見たときは、洗練の極みの「コラライン」などと比べ、人形の造形も動きもぎこちなく、演出もなんだかベタベタな印象で、これはハズしたな…と内心思っていたのです。ところが、今までの彼の映画だと、ちょっとやり過ぎ、人工的過ぎるように感じた手法も語り口も、本作では全部プラスに働いて、すごく楽しい作品に仕上がっています。というか、本作を観て気がついたのだけど、彼のストーリーテリングやキャラクター造形って、もともとマンガチックで、遊び心あふれるものだったんですね。なんだか凄いインテリっぽい、小難しい印象があったので、今まで無駄に身構えて観てしまっていたような。

「ライフ・アクアティック」なんかで使っていた、断面図のようなセットを登場人物達が上下左右に移動するドリーショットをここでも多用しているのですが、通常の撮影に使うパペットよりもちっちゃい、フォルムをかなり省略したパペットを採用していて、すごくコミカルでかわいらしい場面になってます。


予告編の印象と違い、パペットはたいへんしっかり作られていました。口パクがメカニカルな動きをしてるので、そうかもと思ったら、やはりマキノン&ソーンダース製のパペットでした。メカニカルヘッドは、彼らが「コープス・ブライド」で大々的に使い出した手法です。「スクリーン・プレイ」などのバリー・パーヴス作品の人形も、彼らが手がけています。パペットがcrudeな印象を受けたのは、デザイン(児童書が元だから、普段はアダルトなマキノン&ソーンダースの人形と違って、動物たちはかなりシンプルでかわいい。人間たちはさすがの緻密さでしたが)と、毛を使っているせいでしょうか。マキノン&ソーンダースが以前務めていたコスグローヴ・ホールの作品「The Wind in the Willows」の動物たちは、毛を使わないで、フォームラバーで毛並みをうまく表現していて、趣がありました。動かすときに、毛並みがどうしても動いてしまうためパペットの体に毛を使うのはリスキーなのですが、ウェス・アンダーソン監督は、なんとウィリス・オブライエンの「キング・コング」が大好きで、毛並みが動いて技法がネタバレするところがたまらないのだそうです。そうだったのか〜。納得。


監督が「キング・コング」を好きだというのは、メイキング本に載っていました。オールカラーで、どのページも情報満載。でも、せっかくアーマチュアの写真や設計図などが載っていても、図版が小さすぎてよくわからん! 手書き文字のメモとかも、拡大鏡が要必要(^_^;)。アーマチュアも一体ずつ設計が違っていて、父さんギツネのなんか、かなり特殊な感じです。主要キャラのパペットは、Hero(30cm), miniature, micro, mini-micro(3cm)と、4サイズあります。

「父さんギツネ」は、アンダーソン監督の子ども時代の愛読書で、穴掘りに凝ったらしいです。2002年に、映画化の件で、イギリスのダール家を訪れ、未亡人と会ったときの記事が、本に転載されていました。ダール家には、フォックス家の住むカバノキがあり、ミスター・フォックスの書斎の小道具などは、ダール氏の書斎にあったものをコピーしていて、チョコレートの銀箔を丸めたボールなんかも再現されてました。ミスター・フォックスのモデルはダール氏だと、監督は考えているようです。

畑などの風景は、染めたタオル、おちゃっぱ、エアコンのフィルターなどを使って作ったそうです。煙はコットン製でした(^_^)。撮影は29ユニット体制であたり、アンダーソン監督は専用のソフトウェアで全ユニットの進行状況を同時に監視していたのだとか。また、セリフの録音はスタジオではなく、キャストをコネチカットに連れて行って、川辺の場面なら川辺で演技させて録音したそうです。Youtubeにアップされていたメイキング映像に、ちょっとだけその様子が映ってました。

映画雑誌に記者会見のレポートがちょっと載ってたのですが、ある記者が監督への質問で、シュワンクマイエルを引き合いに出して(ストップモーションというと、シュワンクマイエルを連想するのかしら?)、本作の政治的意図を聞くと、アンダーソンは「盗みは善てことだ!」って答えてました(^_^)。また別の記者は、ビル・マーレイに、アナグマを演じたことで、内なるアナグマを発見できたか、とか聞いてました。身構えちゃうのは、私だけじゃなかったようで(^_^;)。それから、曲を提供している、なんとかっていうアーチストが、映画の中でもパペットで登場してバンジョーを弾きながら歌を歌うんですが、彼はずいぶん後になるまで、自分は動物のパペットになると思っていたのだとか。

映画は25日の感謝祭前日に拡大公開されたのですが、盗んだ七面鳥などの料理がたくさんテーブルに並ぶ場面などがあって、この時期にピッタリな内容でした。ミスター・フォックスたちは、普段はヒューマナイズされてるのに、食事の時だけ、豹変して皿に顔を突っ込んでガツガツ食べるところとか、目がグルグルしたりバッテンになったり、ミセス・フォックスの描く風景画に必ず雷が走っていたりするところが特に好き。

trivia 1: 農場主のビーンから届いた宅配便屋さんの名前が"YAMAMOTO"でした。(^_^)
trivia 2: Zion I というアーティストの"So Tall"という曲のMVに、本作に出てくるイタチくんが特別出演しています。MV製作は、エンサイクロペディア・ピクチュラ。コマ撮りの面白い作品です。

それにしても、「コラライン」といい、「かいじゅうたちのいるところ」といい、本作といい、今年のラインナップはかなりやばい…。

★メイキング映像 ★

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