2009年12月9日水曜日

"AN EDUCATION"「17歳の肖像」

1960年代のイギリスを舞台にした、少女の成長物語です。イギリスのジャーナリスト、リン・バーバーの短い回想録を、「ぼくのプレミア・ライフ」「アバウト・ア・ボーイ」のニック・ホーンビィが脚本化しています。


16才のジェニー(キャリー・マリガン)は、才気煥発な優等生。ロンドンに住む中流家庭の両親は、一人娘のオックスフォード入学に期待をかけています。雨の日の放課後、チェロを抱えてバスを待っていたジェニーに、しゃれた車に乗った男が声をかけます。家まで送ってもらう間、ウィットに富んだ30才のデヴィッド(ピーター・サースガード)との会話を楽しむジェニー。デヴィッドの方も、チャーミングで頭の回転の速いジェニーを気に入ったらしく、その後もコンサートやオークションに誘ったり、友人の裕福なカップル(ロザムンド・パイクとドミニク・クーパー)に引き合わせたり。退屈で灰色の学校生活に比べ、デヴィッドの世界はなんと華やかなことか! ついには、あこがれのパリに連れて行ってくれるとまでいいます。もちろん、両親が心配しないわけはわりませんが、物腰が柔らかく、人を乗せるのがうまいデヴィッドを、コロッと信用してしまいます。

ジェニー役のキャリー・マリガンが、絶賛されています。「プライドと偏見」で、キーラ・ナイトレイの浅はかな妹キティを演じていた子みたいです。チャーミングなんだけど、えくぼ以外にも、いろいろでこぼこのできる顔をしているので、お肌の手入れに気をつけるといいと思います。ロンドンの空模様同様、やや精彩に欠ける映画を最後まで飽きずに観られたのは、マリガン演じるジェニーの魅力が大です。世間知らずな少女をたらしこむ中年男、という構図に嵌らなかったのは、ジェニーの早熟な知性が、狡猾なデヴィッドを凌駕して、やがてはデヴィッドの方がジェニーを失うまいと、焦り始めるという展開になるからです。つまり、飲み込みの早いジェニーは、デヴィッドを「卒業」しちゃうんですね。無理矢理飛び級させられたような、痛みを伴う方法ですが…。

60年代当時のロンドンの、おちついた町並みや風俗も楽しめました。そして、住まいの内装に、登場人物たちの人となりを視覚的に表現しているようなところも面白いです。ジェニーの家に初めて入ったデヴィッドは、母親に「ジェニーのお姉さんですか?」とおべっかを遣い、家の内装(平凡で質素だけどよくメンテされていて、居心地がよさそう)を褒めます。デヴィットの友人カップルの屋敷はリッチで華やか。ジェニーに目をかけている女教師の部屋は、本人の印象とは違い、非常に洗練されていて、それまで彼女を見下していたジェニーが目を見張ります。そして、とある秘密が明かされた後でさえ、とうとうデヴィッドの家の中が画面に映ることはありません。

教育熱心で厳格そうな校長先生を、エマ・トンプソンが演じています。彼女の言い分はとてもまっとうなのですが、いくら賢いとはいえ青春まっただ中の女の子が、サッチャーみたいなエマ校長や一生華やかなものとは縁のなさそうな女教師と、パリのどっちを取るかと言ったら前者に勝ち目はないでしょう(^_^;) ギャングに加わるティーンエイジャーが後を絶たないのも、構造上仕方のないことなのかもしれません。地味な女教師を演じるのは、オリヴィア・ウィリアムズという女優さん。フィオナ・ショウと、ジーナ・マッキーを足して2で割ったような雰囲気です。あの手の女優さんには事欠かないなぁ、イギリス。

誘惑者にホイホイ娘を差し出すような、間抜けな父親を演じているのはアルフレッド・モリーナ。傷心の娘に、そっと紅茶とクッキーを差し入れする姿に、萌えます。娘の進路について、このナイーブな両親が下した意外な見解に、「教育」とはなんぞや、とハタと考えてしまいます。

オープニングのオシャレなグラフィックを、MOMOKOという人だかスタジオだかが手がけていました。エンディングの歌は、ダフィー。ぴったり…。

▼こちらもよろしく。
「ぼくのプレミアライフ」
ニック・ホーンビー原作。
(羊は字幕担当)

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