2009年12月22日火曜日

"Up in the Air"「マイレージ、マイライフ」

「マイレージ、マイライフ」を観てきました。すでにさまざまな映画賞候補にのぼっている話題作です。

ジョージ・クルーニー扮する主人公ライアンは、会社の役員を代行して、社員にリストラを宣告するのが生業。まあ相当えげつない商売といえます(というかそんなビジネスがあるというだけで暗くなります)が、ライアンは仕事にかけてはゴルゴ13並に凄腕で、しかも出張人生の役得でつくマイレージのポイントを貯めまくるのが、なによりの楽しみだったりします。めんどくさい人とのしがらみや重くて身動き取れなくなる家財道具は一切持たず(一応住むところはありますが、室内は一瞬ホテルと思うぐらい、私物が全くない。1年の300日以上出払っている)機上のバックパッカーのような彼の生き方は、小気味よいほど。「ターミナル」のトム・ハンクスは、嫌々空港を我が家にしましたが、ライアンは喜々として、空港を「マイホーム」とみなしています。同じ価値観を持つ魅力的な女性(ヴェラ・ファーミガ)とも出会い、ライアンの人生航路は順風満帆。ところが、ルーキー社員のナタリー(アナ・ケンドリック)が、オンラインで解雇通告をするという、さらにえげつない方式を提案します。そうなると、エージェントが各地に赴く必要がなくなり、会社的には出張費が浮いて万々歳ですが、ライアンはマイレージを稼げなくなり、楽しい機上生活からつまらない地上生活にしばられることになってしまいます。それなのに、何の因果か上司はライアンをナタリーの「実地研修」のインストラクターに任命します。



※ここからややストーリーに踏み込みます※

ナタリーは頭もいいし、心理学も修めた理論派で、実地のリストラさばきもライアンの指導の下なんとかうまくこなします。折々に挟まれる、リストラを告げられ、様々な反応をする人々。それをなだめようとするライアン達の説得術……。とりわけ印象的なのは、監督の前作「JUNO」でジュノのお父さん役をやったJ・K・シモンズーー確か「スパイダーマン」の新聞社編集長もやっていたーーとライアンとのやりとり。子ども達から仰ぎ見られることが大事だというシモンズに、ライアンはどう対処するのか?)若いので怖いもの知らずのナタリーは、ベテランのライアンにも物怖じせずに、彼の「マイレージライフ」を「そんなのテリトリーにおしっこで匂いつけして回るのと同じじゃない、子どもね!」とピシャリ。タフで生意気でぜんぜんかわいいとこないんですが、ある時、彼氏に(テキストメッセージで)振られて、それこそ子どもみたいに、ワンワン泣き出してしまいます。そこがすごくかわいかったです。こんな非情な仕事をしているくせに、愛とか幸せな結婚生活とかを夢見、自分はそういう幸せに浴して当然と思っている、むしのいい無邪気な女の子(まるでアメリカ人そのものだね、って言ったら、ナタリーに「それは人種偏見よ」って怒られるだろうな)。

身軽なひとりぼっち生活を楽しんでいるライアンですが、身内に姉と妹がいます。近々、妹が結婚することになり、披露宴で飾りたいからと、ライアンに新郎新婦の写真パネルを送り、出張先で記念写真を撮るように頼みます(よく妖精ノームの置物でやるみたいに)。ところがパネルが愛用のキャリーに入り切らなくて、頭部がはみ出したまま、スーツケースを引いて歩くライアン。そんな姿を見ていると、「ああ、家族に連絡取らなきゃ!」って思っちゃいます。

結婚式当日、突然怖じ気づいちゃった("cold feet"といいます)新郎を説得しろ、と姉に言われて、人を切り捨てるための説得ばかりしているライアンが、人と結びつけ、と説得しに、新郎のもとへ行きます。さあ、彼はどんなことを言って、うまく新郎をその気にさせるのでしょうか。ここが、物語の「転」になります。(「転」が美事に決まると、「結」は結構どうでもよくなるよね…閑話休題)一室に閉じこもった新郎は、なぜか絵本の「ビロードうさぎのなみだ"Velveteen Rabitt"」を読んでます。新郎が「これ読んだことある?」とライアンに聞くと「It's very powerful!」って答えるんですよね〜! (^_^) You can say that again! 

新郎は一時的にパニックに陥っただけなので、ライアンのその場しのぎのtipsで落ち着いたみたいなのですが、彼の疑問は、「人生の意味って何よ?」という根源的な疑問。もっとちゃんとした答えを聞きたかったけど、ライトコメディから人生の悟りを得ようなんて、考えが甘かったわ。

セリフが、ビジネスマンたちのリアルを反映しているのでしょう、劇場では壮年の男性が受けてよく笑ってました。クレジットに流れる歌に聴き入っていたら、途中で、「やあジェイソン(監督)、最近俺、失業してさ、歌を作ったんだ。だからお前の映画に使えると思うよ」っていうソングライターの留守録メッセージみたいのが、挟まってました。(^_^) ホントか。

映画が終わったバスルームで、二人連れの老婦人のひとりが、突然"What a bummer!"(「最低!」みたいな意味)っていうので、連れが「え?何が?」と聞いたら、「あの人が○X○Xだったなんて! ふたりはパーフェクトだったのに!」って、映画に怒ってました。(^_^) すごく微笑ましかったです。

ニコマークの多い感想を書ける映画で良かった。自転車で劇場に向かう途中で雨にやられて、席に着いたときはちょっと吐き気もしてたので、つまらない映画だったら絶対風邪を引いてたと思います(冒頭数分を見逃してしまった。初回は予告編を端折るの、忘れてました)。ぜひ、恋人や大事な人と一緒に、観て欲しい映画でした。

<2010年2月7日>
ライアンに解雇を告げられる社員の何名かは、俳優ではなく、実際に解雇されたビジネスマンたちだそうで、当時の自分の反応や、「こう言ってやりたかった」という思いのたけを、ぶつけてもらったそうなのです。先日ワイドショーの「オプラ」に、ライトマン監督と、そのリストラされてしまった人たちが一緒にゲスト出演していました。とすると、エンディングの歌も、ホントにリストラされた人が、送ってきたものなんでしょうね。

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