2010年1月23日土曜日

"The Lovely Bones"「ラブリーボーン」


数年前、原作がアメリカでベストセラーになって、本屋さんに平積みになっていたのをよく覚えています。帰国後、ピーター・ジャクソンが映画化するという話を聞いて、翻訳されたのを読んでみました。これはフィクションですが、原作者アリス・シーボルトの実体験を基にした「ラッキー」も読んだりしました。ジャクソンが原作を読んだのは、まだ「王の帰還」の音楽を作ってる頃で、ちょうど親しい者を何人もなくしたばかりだったので、大泣きしちゃったらしいです。特に最後の「みんなが長生きして幸せに暮らせますように」という一文に、すごく感銘を受けたそうです。ちゃんとその一文、映画に出てきました。監督の「乙女の祈り」も、少女2人が主人公のなかなか面白い映画でしたが、本作はどのように料理されたのでしょう。



スージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)は、学校からの帰宅途中、変質者に殺害されてしまう。犯人は近所に住む顔見知りの男だった。スージーは天国と現世の中間にある冥界のようなところから、残された者たちを見守っていく。スージーの両親(マーク・ウォールバーグ&レイチェル・ワイズ)、妹と弟、祖母(スーザン・サランドン)、ほのかな恋心を抱いていた男の子、そして、自分を殺した男(スタンリー・トゥッチ)。

映画、とても良かったです。それなのに批評家受けは不当に悪くて、私は悲しいです。せめて日本ではいい評価が出るといいのですけど。というか、日本の方が、この映画をちゃんと受け止められるんじゃないかなという気がしています。ロジャー・エバートは、この映画は間違ったメッセージを伝えていて、映画が不出来なのは全部ピージャクが悪く、原作は読んでないけどきっと原作はもっと繊細に書いていたに違いない、と断定しています。でも原作を読んでたら同じ印象を抱いたんじゃないかな。私は、本作は原作のエッセンスをすごくうまく映画化してると思います(実を言えば原作はあまり好きじゃありません)。間違ったメッセージを伝えているのではなく、間違って受け止めちゃったとしかいえない。そして確かに間違って受け止めてしまう可能性が高い映画でもある。

批評家受けが悪いのは多分、死後の世界の描き方のせいだと思う。たいていはノーテンキ過ぎる、みたいに攻撃してますが、キリスト教的に、抵抗があるんじゃないかな。面白いのは、この映画には、天国はあっても地獄はない(出てこない)のです。たいてはその逆みたいな世界観の映画ばっかりが幅を利かせている中、異彩を放ってます。特定の宗教臭さがなく、あいまいな感じが、かえって日本では受け入れられるのではと思います。死後の世界(映画では"In-between"と表現)に、1人、トリックスターのようなキャラクターが出てきて、面白かったです(このキャラも不評の一因みたいですが)。ニッキー・スーフーというアジア系の女性が演じていて、20代なのですが、こちらの人たちにはティーンに映るのかな。

もし自分が14歳の女の子で、突然死んでしまったら、この映画に描かれているみたいに、家族や友人にはいつまでも覚えていて欲しいし、悼み続けて欲しい。自分のことを忘れて欲しくない。でも同時に、幸せになって欲しい。自分の死のせいで、不幸になったりして欲しくない。そういうアンビバレンツな気持ちが、"In-between"として表現されていて(「かいじゅうたちのいるところ」のかいじゅうたちのいる島と同じだよね。)、もうビシバシ共感しちゃったんだけどなぁ。

まぁかなり感性に訴えるタイプの映画だと思うので、共鳴できる人が多ければ大ヒットするし、少なければカルト化する。どうやら本作は後者になっちゃいそうですね。

音楽がブライアン・イーノでした!

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