2010年2月10日水曜日

"The Blind Side"「しあわせの隠れ場所」

公開は去年の感謝祭シーズン(11月)でしたが、2010年のアカデミー賞の作品賞と主演女優賞にノミネートされたため、また一部の映画館でかかるようになるようになりました。日本でも、もうすぐ公開されるようですね。

実在のNFL選手、マイケル・オアー選手の伝記『ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇蹟』をベースにした作品です。オア−選手を引き取った裕福な家の主婦を、サンドラ・ブロックが演じています。ちょうど日曜日にスーパーボールがあったばかりだし、今なら観客は、その余韻を引きずりながら映画を楽しめるでしょう。オアー選手のチームは、出てなかったみたいですが。(裏番の子犬版スーパーボール、"Puppy Bowl"も以外に人気があります!)。

この映画の感想を書くのはすごく難しいけれど、トライしてみます。

マイケル(ビッグ・マイク)は実在の人だけど、黒人で、図体がデカくて、勉強が全然できなくて、家庭環境が劣悪で、それまで自尊心を持てずにいたところなど、まるで「プレシャス」のフットボール版のような印象。でも2人の映画での描かれ方は、みごとに対照的。マイケルはまるっきりのデクノボー。ボーッと突っ立ってるだけで、サンドラの言われるまま、忠犬よろしく唯々諾々としたがいます。実際、捨て犬でも拾うように、サンドラ・ママはビッグ・マイクを家に連れ帰ります(ママの行動はとっても立派なんですよ。問題は、あくまでマイケルの、映画における描かれ方というか、描かれなささ)。「ギャンブル・レーサー」というマンガに出てくる、いつも頭から泡拭いてる競輪選手を思い出してしまいました(^_^;)。サンドラという女王様を引き立てる日陰の花に、自我は邪魔なだけなのです。

別に映画自体に、共和党のプロパガンダ的な側面はまったくないのですが(でも画面全体から、共和党色がきつい香水のようにプンプンと…)、サンドラ・ブロック演じる主婦が、サラ・ペイリンの顔とダブッてしまって、しかたありませんでした。

共和党の人たちには、きっと世界はこう見えているんだろうなぁ。かわいそうな黒人は、善きサマリア人たる自分たちが教え導いてあげる存在なのね。教え導いてあげないと、お互い殺し合って終わっちゃうのね。そして、まわり中から「君はいい人間だよ」って言ってもらわないとがまんできないのね。

この映画が人気がある理由が分かります。

チャーミングな映画でしたよ。サラ・ペイリンが、好き嫌いを超えて、なんだかチャーミングなのと同様にね。

もちろん、実在の、サンドラが演じている女性一家は素晴らしいと思うし、映画だってよかったですよ。サンドラ・ブロックのキャラクターを見てるだけで痛快だし。ただ、どうしても、見てる間じゅう、上記のようなメッセージを受け取ってしまって(受け取らずに素直に楽しめる人もたくさんいると思う。)、しかたなかったのです。最後の方は、そういうもやもやした気持ちは脇に置いておいて、マイケルを応援したり、サンドラ一家と一緒に喜んだりできました。

サンドラが演じる女性のような、善意にあふれたの人たちの危ないところは、それが今回のように、 よい結果につながればいいけれど、「善意」が空回りしてしまうと、例えば今こちらで大きな問題になっている、どさくさまぎれに正式な手続きも踏まずにハイチの子ども達をアメリカに連れてこようとして逮捕されたキリスト系団体の人たちとか、捕鯨船を攻撃するグリーンピースの人たちのようなハメになってしまいかねないところ。だから、サンドラ(役名失念)も途中で不安になって、夫に「私はいい人間?」と聞いたりするのです。それでも人に援助の手を差し伸べる、それはとても尊いことで、そういう好意を貶めるつもりはまったくありません。念のため(^_^;)。この映画では、私のような気持ちを抱いて見てしまう観客すら懐柔しようとする手をいくつか打っていて、その計算高さに舌を巻きつつ、陥落してしまうのです。まるでこの映画自体が、主人公の女性そのもののよう。

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