2010年6月29日火曜日

"$9.99"

イスラエルとオーストラリア合作の、パペット・アニメーションです。しかも、長編。
redboxという、DVDレンタル自販機で、観たことのないパペット・アニメのカバーをみかけ、興味を持って、どんなものなのか、Netflixのオンラインレンタルで観てみたら、これがなかなかどうして、内容も、アニメーションも、とても良かったです。



真っ暗な画面。やがて、ぽつん、ぽつんと窓の明かりが灯っていき、段々と、物語の舞台となる、バウハウス風アパートのエスタブリッシュ・ショットが現れます。建物のセットが、すごくリアルで、本物とみまごうみたい。日光のコントランストを強調した照明が素晴らしいです。

で、本作は、そのアパートに住む住人達のお話しです。父親と3人暮らしの兄弟、その長男が惹かれる引っ越して来たモデル、ケンカ別れするカップル、一人暮らしの孤独な老人、サッカー少年の子どもと厳格な父親…。トリックスターとして出てくるホームレス/天使のおっさんの声を、ジョフリー・ラッシュが当てています。彼いわく、本作は「ロバート・アルトマンのストップ・モーション・アニメ版」だそうですが、まさしくそんな感じ。

パペットはフォームラバー製で、油絵みたいに、荒い筆あとの残る色づけをしているのが面白いです。動きもかなり精密でなめらか。ぎくしゃくしたところが全くありません。公式サイトをあたったら、キャノンの30Dで、1秒12コマで撮影してるみたい。30コマぐらい、細かく動かしてるのかと思いました。人形とセットのスケールは、1/6。

タイトルの「9.99ドル」というのは、次男のデビッドが、郵便受けに入っていた広告に興味を抱いて通販で買った「The Meaning of LIFE」という本の値段。デビッドは、ケーキ作りの上手な、優しい青年ですが、現在無職で、実直な父親の頭痛の種でもあります。最初に登場するのがこの父親で、通りでタクシーを拾おうとしていると、ホームレスらしき男にタバコと火を所望されます。次に、コーヒー代をせびるのですが、よく見れば拳銃を手にしているではありませんか。父親は焦って財布ごと渡そうとしますが、ホームレスは、これは拾っただけで、あんたを撃つつもりも脅すつもりもない、と説明します。じゃあなんでそんなの持ってるんだ、と聞くと、最後に、誰かにコーヒー代を頼んで、くれなかったら自分を撃とうと思ったんだ、と返事が返ってきます。そんなことを聞かされたら、コーヒー代をあげるしかないじゃないか——。と、そんな風に物語りが転がっていきます。

アパートの住人は、みんな愛する対象をなくしたか、まだ見つけておらず、そして、愛を手に入れるには、代わりに自分の何かを失わなければいけない、というような、ちょっとシュールな寓話でした。

やーほんと、よくこんなの、ストップモーションアニメで作ったなぁ。世の中は広いなぁ。

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