2010年6月19日土曜日

"Exit Through the Gift Shop," "Work of Art"

グラフィティ・アーティスト達の活動を描く、ヒップなドキュメンタリー――とばかり思って観に行ったら、途中から、ぜんぜん違う方に行っちゃって、いい意味で肩すかしをくれる映画でした。

これはね、ある1人の人物に関するドキュメンタリーでした。
その男、ティエリーは、LAで古着ショップを営むフランス人のおじさん。お店は大繁盛して何の問題もないのですが、ある日ビデオカメラを手にしたときから、なぜか憑かれたようになり、四六始終、彼の身の回りの日常を撮りまくります。ほとんど中毒患者のようです。ある時、フランスに里帰りした折に、親戚の若者がグラフィティ・アーティストなのを知り、彼の活動をビデオに収めはじめたのをきっかけに、ロスに帰ってもその若者(インベーダー・ゲームのインベーダーのアイコンステッカーを、街中のいろんなところにペタペタ貼る、通称『インベーダー』)以外のグラフィティ・アーティストたちを何人か追いかけはじめます。特にティエリーが執心なのが、バンクシーという超有名イギリス人アーティスト。パレスチナ西岸の壁に書いた少女の落書きや、テイト美術館に勝手に自分の作品を展示したことなどで、世界的に注目されている人物なのだとか。注意深く正体を隠しているバンクシーとの連絡法が分からず、途方にくれていたところ、幸運にも知己を得ます。グアンタナモ収容所の収監者を模した人形をディズニーランドに無断で設置したり、全身にペイントをほどこした生の象の展示で物議を醸したロスの展示会等、彼の活動を逐一記録していくティエリー。バンクシーは、撮るだけ撮ってほったらかしの膨大な映像を、一本の映画にしたらどうか、と彼に提案します。でも、アドバイスに従ってティエリーが編集したドキュメンタリーは、悪い意味でぶっ飛んでおり、とても他人の鑑賞に堪えるものではなかったらしいです。

次にティエリーがやろうとしたのは、移設で空きビルとなった元CBSビルを借り上げ、バンクシーがやったようなストリート・アートの展示会を開催すること。バンクシーらの手法を見よう見まねで真似、作品作りは雇ったペインターなどに作らせ、一方地元紙に取材させるなど、宣伝にも余念がないティエリー。蓋を開けてみると、地元紙の大々的な記事が効いたのか、これが長蛇の列の大盛況で、でっちあげのガラクタ作品が、高値でどんどん売れていきます。「マジ!?」とあっけにとられる展開です。

映画の要所要所で、照明を消した部屋に座る覆面をした人物が出てきて、説明をするのですが、この人がバンクシー。本作は、バンクシーその人が監督しています。この映画そのものが、「ティエリーに映画を作れ、と言っておいて、彼の映画を俺が作っちゃったよ」とのたまうバンクシーの創作による、フェイクムービーなのではないか、という疑惑もあるほどの問題作です。

ナレーションは、「グリーンバーグ」に出ていたリス・エヴァンス。

去年のカーメル映画祭で観た"untitled"という映画も、売れっ子画家の兄と売れない現代音楽家の弟と、アートギャラリーオーナーの女性との三角関係を通して、現代アートの怪しさを皮肉った面白い作品でした。現代アートそのものが、映画の題材として相当おいしいことは、確かかも。ちょうど、BRAVOチャンネルで、"Work of Art"というリアリティ番組が始まったところです。サラ・ジェシカ・パーカーが制作に絡んでるようですが、ようするに無名アーティストたちの勝ち抜き番組。第2話をたまたま観たら、これがかなり興味深くてはまりそうな予感。1人、天才肌の若い男の子がいるのですが、強迫神経症を患っているらしくて、かなりクセのある子で、アーティスト仲間からも「彼のことは分からない」と、エイリアン扱いされいます。でも、出来上がった作品は、2回とも他の誰よりも優れていて、とあるアーティストの作品を「クソつまらない」とバッサリ切り捨てたりします。私としては、もうちょっと材料の買い物風景とか、制作過程とかをつぶさに映して欲しいのですが、そういう番組ではないのでしょうがないですね。

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