2010年8月31日火曜日

STOP MOTION FILM FEST


去る8月28日(土)、ロサンゼルスで小規模なストップモーション映画祭がありました。
"Stop Motion Magazine"というオンラインマガジンがあるのですが、そこの主催で、今回が第一回です(マガジン自体が1周年を迎えたそうです)。

 会場は、ロサンゼルスにあるエコーパーク・フィルムセンター。近くにはドジャース球場があります。同日の昼前にサンタクルーズを出発して、6時間ほど5号線をひたすら爆走し、午後8時からの映画祭を観て、すぐにまたとって返すというハードスケジュールでした。翌日にはエミー賞の授賞式もあるし、マガジンの編集長ジョン・イクマ宅でバーベキューパーティもあったのですが、だんなの仕事の締め切りと、私のカレッジ初日があったので、ゆっくりできなくて残念。

フィルムセンターはとても小さなところで、7時半過ぎの開場から、座席はどんどん埋まっていきます。キャパは55席とありましたが、補助席も出し、それでも足りずに床に座らせ、さらには入り切らなくて断ったりしていました。イクマ氏自ら、もぎり嬢をつとめ、奥様と小さな娘さん2人もお手伝いされてました(^_^)。



上映作品は、以下の通り。

Black Out -by Lina Younes
The History of Man Part 2 & 3 - by Jeff Draheim
El Diablo - by Matt Ellsworth
How to Make a Baby - by Cassidy Curtis and Raquel Coelho
Make A Mate - by Jennifer Jordan Day
Operation: Fish - by Jeff Riley
The Epiplectic Bicycle - by Lauren Horoszewsky
Clay Lunch - by Egor Ivanov
To the Rescue - by Emma Coleman
Sunday - by Kris Daw
M.A.N.D.Y. vs BookaShade "Donut" - by Stephan Hambsch
What A Night -by Jesse Brunt
The Happiness Tree - by Mac McCord
Keeping the Heat  - by Al Oldfield
Further - by Ki Taube
Bygone Behemoth - by Harry Chaskin
In the Fall of Gravity - by Ron Cole
Super Battle - by Ethan Marack
Miracle Lady - by Michal Abulafin & Moran Somer
The Snow Princess - by Audrey Genevieve Holand


ストップモーションでさえあればどんなジャンルでもよく、"How to Make a Baby"は、向きあって立つ夫婦を、一度に1コマづつ、同じ場所で9ヶ月にわたって実写で撮っていき、続けて映した時、夫が妻の口から息をプーッと吹き込むと、妻のお腹がどんどん大きくなっていき、最後にはポン!と赤ちゃんが生まれるまでが描かれるという、微笑ましい一発芸でした。

上映ラインナップが、子どもがクラブ活動で作ったようなものから、超一流のテクニックを見せる驚異的な作品まで、レベルが千差万別なのが、第一回っぽかったです。栄えある大賞のパープルモンキー賞(観客賞。像はジョンの自作らしい)は、モンスター映画全盛期を懐かしむ、尾羽打ち枯らした怪獣くんの、涙なくて観られない"Bygone Behemoth"が獲りました。モノクロの照明が美しかったです。モスラもカメオ出演。審査員賞は、締め切り日ギリギリで届いたという、イスラエルからのエントリー作品”Miracle Lady"。イディッシュ語/英語字幕の人形アニメで、恋人の帰還を待ち続ける女性と、不死の「祝福」を受けてしまった死にたい女性のアイロニカルなお話でした。

 "Bygone Behemoth"

作者のHarry Chaskinは、最近始まったTVシリーズ"Mary Shelley's Frankenhole" のアシスタントアニメーターを務めています。同シリーズは、"Moral Orel"のクリエイターDino Stamatopoulosの新作で、頭部が切り紙なのがユニークなストップモーションアニメです。

ジョン編集長のお気に入りは、CGとコマ撮りを組み合わせた"Operation: Fish"。子ども達の金魚鉢から金魚を盗むクリーチャーと、正義のヒーローの闘いを描きます。「コラライン」のアニメーター、Jeff Rileyによるさすがのテクニックでしたが、テクニックの凄さでは、"In the Fall of Gravity"のパペットの表情、口パク、動きが、ストップモーションアニメではありえないなめらかさで、一頭地を抜いてました。

作者のRon Coleは、その道20年のベテラン特撮アニメーターで、リプトン BriskのCMの精巧なパペットを作った人なのだとか。彼は実写に迫るリアルなパペットを作ることに情熱を傾けているよう(レイ・ハリーハウゼンが心の師らしい)で、アニマトロニクスなどで使うテクニック(ケーブルコントロール)を、コマ撮り用のパペットに応用しているらしいです。彼のウエブページには、作り方の解説も載っています。作品の内容は、「指輪物語」を思わせる魔法使いと、お供の間に交わされる「命とは何か」という哲学談義で、「生命とは重力に支配される操り人形に過ぎない」というようなことを魔法使いが語ると、その言葉通りに道化姿の操り人形が動き出します。魔法使いとお供の表情や口パクの精巧さも凄いのですが、操り人形の真っ白いクラウンの動きが、これまた本当に生きているようなのです。コールは、これをゆくゆくは長編にしたいそうです。この作品は、"Best Puppet"賞をもらいました。2008年製作で、いくつかのサイトで全編が観られます。


"The Epiplectic Bicycle"という作品も好きでした。エドワード・ゴーリーの「優雅に叱責する自転車」が原作なんですって。不条理なユーモアが、すごくツボです。不条理といえば、日本の誇る不条理人形アニメの大御所、敬愛する川本喜八郎が亡くなられてしまいました。大ショックです。日本のストップモーションアニメ界にとって、漫画界の手塚治虫に匹敵する方でした。観客による投票の集計と、審査員の協議の間、観客の誰かが持ってきた氏のDVDから、「鬼」が上映されました。アメリカのストップモーションファンに、通じるかしらとちょっと心配しつつ観ていたら、案の定、最後の、「人の親はあまりに老いすぎると鬼になるという…」という解説部分で、笑いが起きたのが、文化の違いを感じさせました。会場に来ていたLAウィークリー紙の記者で、同紙にこの映画祭の紹介記事を書いたというトッドに感想を聞いてみたら、「タイムレスな作品だね、何十年も前に作られたそうだけど、昨日作ったと言っても通用する」と言ってました。川本喜八郎のことはまったく知らなかったみたいで、数日前に亡くなったと教えたら驚いていました。

会場は狭かったけど、ライブストリーミングで観ていた人が、多数いた模様です。後でジョンが、animationclay.comのマーク・スペースや受賞者の書きこみを見せてくれました。来年には、twisted clay animation film festivalもやるみたいです。イクマ氏は、今夏来日して日本のストップモーションアニメーションの取材をされたのですが、取材先のひとつ、メルヘン村の船本恵太氏とすっかり意気投合されたみたいで、そんな縁で、私もお知り合いになりました。FYI。



*おまけ*
ハリウッドで見かけた怪しいカフェ

ハイウェイのrest areaにあったアイスキャンディーの自販機。
パカッとアイスボックスの蓋が開き、筒状の腕が空気圧でキャンディーを吸い上げます。


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