2011年1月2日日曜日

"true Grit" 「トゥルー・グリット」

ジョン・ウェイン主演の往年のウェスタン『勇気ある追跡』(1969)を、コーエン兄弟がジェフ・ブリッジス(『ビッグ・リボウスキ』コンビだぜ、dude)を主演に迎えてリメイクしました。

なんといっても、3年前に『ノー・カントリー』でオスカー作品賞を撮ったコーエン兄弟と、昨年『クレイジー・ハート』で同主演男優賞を(コリンを蹴落として)射止めたブリッジスの、ピカピカのアカデミー賞受賞者がタッグを組んだとあれば、それだけでも後光が差しそうだし、前評判もそうとう高いし、なにより予告編がカッコイイでしょう。元旦の夕方観に行ったのですが、劇場前は長蛇の列。切符売り場で"True Grit 2枚!"って言ったら、"The Tourist"の切符が出てきて、トホホな気分で場内に入ると、観客層は、5〜60代のおっさんが中心です。「久しぶりの硬派な西部劇が観れるぞ〜」と、正月早々勢い込んで来たんだろうなぁ。そして2つとなりの小屋では、ジェフ・ブリッジスがグリッド世界に閉じ込められる『トロン』を絶賛上映中だったりします。時と次元を駆けるおやじ。

1880年代のアーカンソー州(ロケはテキサス州)。14才の少女マティは、殺された父親の敵を討つため、"true grit(真の勇者)"と言われる片目の保安官を雇い、犯人追跡の旅に出る。

ジョン・ウェイン版よりも、原作に忠実だそうで、オリジナル版では21才のキム・ダービーが演じたマティを、本作ではほぼ実年齢のヘイリー・スタインフェルドが演じています。キム・ダービーのマティは、ボーイッシュなお転婆娘という感じでしたが、こちらのマティはそれどころではなく、死体と一緒に寝ても平気だわ、海千山千の商人やむさいアウトロー相手でも一歩も引かないわ、目の前で凄惨な殺し合いが起きても冷静さを失わないわ、とんでもない肝の据わりようで、ほとんど情緒欠陥症と紙一重です。自分が子どもだとという意識も女だという意識もこれっぽっちもなくて、お下げ髪の小さな体でどんな相手にも真っ向勝負で対峙する姿は、大きなお腹を抱えて淡々と任務に当たっていた『ファーゴ』のヒロインと重なります。

でも、それはマティに限ったことではなく、ジェフ・ブリッジスのコグバーンも、敵のトム(ジョシュ・ブローリン)も、ひいては「ノー・カントリー」のおかっぱ殺人者も、コーエン兄弟のキャラクターに共通するものかも知れません。どいつもこいつも、自分の生を、自分の性(サガ)に従って、馬車馬のように突き進んでいるだけで、そこには何か、目的とか、そうすることによって何かが得られるとか、自分が幸せになれるとか、そういうもののために行動しているのではない気がします。そして、自分の進路と交錯する他者がいた場合、障害物を排除(=ぶっ殺す)するけれども、勝者がもらえるのは、自分の生を続ける権利だけ。マティにしても、敵討ちという目的はあるけれど、頑なに、目的を貫き通した結果、何が得られたかというと…。

「復讐」という目的も、どんな目に遭ってもあきらめないマディの一徹さも、どちらも肯定も否定もしてないし、かといって「あなたはどう思う?」と観客に投げかけているわけでもない、相変わらずの、ニヒルなコーエン作品でした。

撮影は、すごくきれいでした。とりわけ、傷ついたマティを抱えたコグバーンが、夜っぴで馬を駆るシーンは、おとぎ話のように美しかったです。ノルシュテインのはりねずみくんがウロウロしていてもおかしくないような雰囲気の、美しい山並みと夜空は、CGなのかなぁ。

それから、クライマックスの対決シーンも、むちゃカッコ良かったです。男臭い西部劇を期待してきたおっさんたちも、満足でしょう。

さらに蛇足。テキサス・レンジャー役のマット・デイモンも、すごくよかったです。彼に関しては、絶妙の配役という意見と、完全なミスキャストという意見と、まっぷたつに割れてるようですが。

ところで、ほんの短いものでしたが、「GANTS」のティーザーがかかりました。ビックリ。日本でも公開まだなのにねぇ。

1 件のコメント:

電気羊/e-sheep さんのコメント...

上の駄文を書いた後、さらに思ったんですが、コーエン作品のキャラクター達って、絶対ケミストリーを起こしませんよね。恋愛感情であれ、友情であれ、親子愛であれ、師弟愛であれ、競争心であれ、登場人物と登場人物が接触すれば、相互になんらかの影響があり、それがストーリーのドライビング・フォースになり、カタルシスになるわけじゃないですか。でも、それがないと思いませんか、コーエン作品って…。みんな、flat charactor。気の合う兄弟に恵まれてるから、他者を必要としないのかな、コーエン兄弟。彼らには、ボーイミーツガールのお話しは、絶対撮れませんね。でも『エヴァンゲリオン』を実写化するときには、彼らにお願いしたいですね(ない、ない)。