2011年4月4日月曜日

"My Dog Tulip" + "THE MIGHTY RIVER(「大いなる河の流れ」)"

BBC出版の雑誌編集者だったJ・R・アッカリーが、1956年にものした同名の自伝(「愛犬チューリップと共に」の題で1970年に日本でも出版された模様)を、ポール&サンドラ・フィアーリンジャー夫妻がアニメ化した映画です。

イギリスに暮らす初老の文筆家(アッカリー氏)と、メスのジャーマン・シェパードとの蜜月の日々を綴ったお話しです。


さらりとしたスケッチ風の筆致と淡い色使いの絵が、目に心地よい。公式サイトによると、「映画全体が、手描きで描かれた原画に、コンピューターで色をつける手法で創られたはじめての長編アニメ」だそうです。また、映画の公式Youtubeチャンネルでは、製作風景を映したメイキングも見られます。主人公の声(=ナレーション)をクリストファー・プラマーがアテてるのですが、最初、フィアーリンジャーは主人公をアッカリー本人に似せて、60代の男として描いていましたが、プラマーの声に合わせて、もっと年取った感じになったそうです。映画を観ていて、「これどうやってナレーションとアニメーションの演出を合わせたのかしら。もしかしたら、先にナレーションを吹きこんだんじゃないかしら」と思ったのですが、やっぱり、先にナレーションを入れていたんですね。チューリップの生態観察の描写になると、黄色い罫線入りのノートに鉛筆を走らせたような線で、犬を2足歩行にしてワンピースを着せる擬人化した絵になるのがおもしろいです。声では、ほかにリン・レッドグレーヴと、イザベラ・ロッセリーニがアテています。リン・レッドグレーヴは、彼女の遺作となりました。

ポール&サンドラ・フィアーリンジャーというアニメーターは知らなかったのですが、いろんな賞をもらったことのある、ベテランアニメーターペアのようです。IMDBによれば、なんと日本のAshiya(芦屋?)生まれなんですって。でももともとはチェコの人のようです。彼のフィルモグラフィーに、"Still Life With Animated Dogs"というのがあります。こちらは、40年にわたるポール・フィアーリンジャーと犬たちの生活を綴った自伝となっています。アッカリーのこの本を、どうして彼がアニメーション化したか、納得です(^_^)。チェコで鬱屈した日々を送っていた若き芸術家の時代から、飼い犬との深い繋がりを築いていたフィアーリンジャー。「イギリス人が犬を愛するのは、人間同士を愛する術を知らないからだ」というのアッカリーの言葉、よくわかるって、言ってました。

フィアーリンジャーのアニメーション・スタイルは、あまり細かく中割りをしません。「イリュージョニスト」のフルアニメーションと比べると、ずいぶんギクシャクして見えるけれど、もちろん、彼らの絵柄にはそれで適っています。
張り詰めた日々が続く中、少し息をつける時間が欲しくなったときには、こういうアニメ作品は求めていた、ゆったりと自分を見つめる時間を提供してくれます。おすすめです。日本公開されるといいな。ジブリ、買って。

★"Still Life With Animated Dogs"がPBSによって丸ごとアップされています。


※「犬物小品文化研究所」というサイトで、"Still Lif〜"についてとても詳しく紹介しているページがあります。

ところで、この映画をみた頃(3月下旬)、私はカレッジでアニメーション・ストーリーボードのクラスを受講していたのですが、最後の授業の最後の20分ほど、教授がフレデリック・パックの"THE MIGHTY RIVER"(「大いなる河の流れ」)をかけてくれました。延々と大河のいとなみを映す映像が続き、最初は、「えー先生デリカシーないなあ、今の時期の日本人にはちょっとトラウマだよ」と思ったのですが、観ているうち、どんなに人間にいためつけられても、寄せては返し、寄せては返し、生き物をはぐくみ続ける波が、人間の愚かささえも飲みこんでくれているように思えてきました。きっと教授からのエールだったに違いない、うん、そう思おう。

☆サンタのビーチであそぶ犬と人間たち

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