2011年4月7日木曜日

"The Room"

2003年に作られた、"The Room"というインデペンデント映画があります。映画は公開後、カルト的な評判を得るようになりました。知られざる名作としてではなく、「史上最低のトンデモ映画」として———。

私がこの映画の存在を知ったのは、"Entertainment Weekly"誌の"The battle over the worst movie ever made"という記事で取り上げられた時。記事によれば、この映画のスクリプト・スーパーバイザーをしているサンディ・シュクレイアが、実質上監督したのは自分だとして、映画のクレジットに異議を唱えているのだとか。なぜ、最低映画として今でもロサンゼルスの業界人たちの間で口にのぼるような作品の監督になりたがるのか? それは、カルト人気に気をよくした映画の現監督・製作・脚本・主演その他モロモロのTommy Wiseau(トミー・なんて読むんだろう…)が、"The Room"の3D版を作ろうとしているかららしいです。スクリプト・スーパーバイザー(記録係)として「シカゴ・ホープ」など、それなりの仕事をしてきたシュクレイアは、この映画がロジャー・コーマンの目に止まって、映画を撮らせてみようかな、という気になるかもしれない、と考えたのだそうです。異議を唱えるようにアドバイスしたのは、マルコム・マクダウェルだそうですよ。

お話しは、主人公のフィアンセ(という言葉は作品内では一度も出てこず、「未来の妻」か「未来の夫」と表現されます)が、親友と浮気する、というもので、これ以上でも以下でもないらしいです。ネットにアップされた感想を読むと、あまりにひどすぎて、脳裏にこびりついてしまうのだとか。英語版のウィキペディアに、詳しくこの作品について紹介されています。

さて、この話題の映画"The Room"が、4月1日、エイプリル・フールの日に、カートゥーン・ネットワークで放映されるというので、どんなにヒドイのか、ワクワクしながら観てみました。確かに、ウワサにたがわずひどい。舞台はサンフランシスコなんですが、ゴールデンゲート・ブリッジが口が利けたら、「こんな映画に俺を出すな!」と訴えそうなくらい、ひどい。まずさ、ポスター観てよ。どうよ、コレ。このポスターから受ける印象と中身、だいたい合っていますが、印象よりもっとひどかったす。

映画の3分の1ぐらい、ベッドシーンなんですが、放映するにあたり、局部とか、やばい映像を、ボカシではなく、真っ黒い四角で覆ったのです、カートゥーン・ネットワークは。その真っ黒い四角が画面に占める量がハンパないです。この映像があんまりだったので、誰かと共有したいがために、この項を書いた次第(^_^)。

▼そこのモノリス、じゃまだ!


▼ Tommy Wiseauご自慢のお尻も真っ暗。


7/17/17
なんとなんとー、"The Room"『ザ・ルーム』の制作秘話をジェームズ・フランコが映画化したという恐ろしいニュースが😅 
下記の内幕本をもとにしたそうです。今年のSXSW(South by Southwest)映画祭ではスタンディングオベーションだったとか。

フランコは、原作本を読んだとき、トミー・ウィソー(と読むのか)に共感したそうですが、映画制作中、自分で認めたくないほど、さらに彼の中に自分の姿を見いだしたそうです。



超余計なことやってくれたよな、と思いつつ、こんな予告編とポスターを見たら、観に行ってしまうでしょう💦

題名は、本と同じ"The Disaster Artist"。17年12月の公開です。


 2003年の公開当時、例の不気味なポスターを見かけてたけどそれが映画のポスターだと思わなかったそうで、"The Disaster Artist"を読んでからバンクーバーで映画を観て惚れ込んだそうです。

原作本、ちびちび読んでいますが、確かに面白いです。ウィソーが出てくるたびに、何をしでかすのかわからなくてハラハラしっぱなしです。よくこんな人物のアシスタントを務められたよなあ、原作者…。

そして、読み終わりました。
何度も笑い転げる箇所もあった(ワイゾーはヴァンパイア映画を作りたがっていて、そのタイトルが"Vampire from Alcatraz"!超観たい!)けれど、やがてせつなくなってきます。映画制作になんらかの形で関わったことのある人、関わりたいと思ったことのある人なら、ワイゾー(フランコたちはそう発音しているように聞こえる)に自分を投影せずにいられないはずです。彼ほど極端でも支離滅裂でもなくても、彼の動機や気持ちは身につまされる。ワイゾーに才能はなかった(ないどころかマイナス)が、金はくさるほどあった。
面白いのは、作者のグレッグ・セステロが、"The Room"以前にとある映画のオーディションを受けたとき、フランコも受けていたこと。その映画、"Retro Pappet Master"の主役を勝ち得たのは、グレッグでした!
"The Room"の迷シーンのひとつに"You tear me apart!"とワイゾーが叫ぶ場面があるのですが、これはジェームズ・ディーン(ワイゾーもグレッグも大ファン)の『理由なき反抗』から取ったもの。話が脱線しますが、今スティーブン・キング「ダークタワー」最終巻を読んで(というか聴いて)いるのですが、突然このセリフが出てきて、え、まさか登場人物が"The Room"を観たっていう設定なのか!? と思ったら、『理由なき反抗』のセリフ、とちゃんと説明もしていました😅 小さなシンクロニシティシリーズ、閑話休題。
本にはグレッグがワイゾーと知り合った経緯から"The Room"のライン・プロデューサー兼出演者になるまでの経緯が事細かに書かれていて、要するに2人は親しい友人というかくされ縁なのですが、とんでもない男のワイゾーを見限らなかったのは自分が馬鹿正直なぐらいloyalだから、とグレッグは説明しています。でもこんな内容の本を書くのは裏切り行為("The Room"の重要なテーマ。ワイゾーは裏切られることを偏執的に恐れている)ではないのでしょうか。でも、その後でも2人でインタビューやイベントにそろって出席してはいるんですよね。ビジネスパートナーと割り切っているのか、おそらく「友情」はもう消滅していると思います。
それにしても、自分の映画が自分の意図するところとは180度違った形で世界的な人気を得てしまったワイゾーの胸の内は、いかばかりなものなのでしょう。今では「最初から受け狙いだった」というスタンスを貫いていますが、シリアスドラマのつもりだったのは、誰の目にも明らかです。"The Disaster Artist"のプロデューサーで、スクリプト・スーパーバイザーのサンディ役として出演もしているセス・ローゲンも、そう指摘しています。映画祭のQ&Aで、ローゲンやフランコが、"The Room"を茶化すために作ったのではなく、ちゃんとリスペクトしているのがわかって、安心しました。ローゲンなんか、"The Room"を10回も観ているそうです。お気に入りの名作は2回も観ないのにね、って。😄
ところで、本書のページを開いて、いきなりビックリしました。このようなロゴが出てきたのです。

岩波文庫か!
もちろん、どちらもミレーの「種をまく人」から。

1 件のコメント:

電気羊/e-sheep さんのコメント...

なんと、今度は出演者による内幕本が出版されるそうです! 
http://shelf-life.ew.com/2011/05/26/greg-sestero-the-room-tommy-wiseau/