2011年9月20日火曜日

"Drive"

収穫の秋というには早いけれど、先週観た"contagion"と続けて、面白い映画に恵まれてます。(その前の"Apolo 18"はダメダメだったけど…)"Drive"は、公開直前・直後に「かなり凄い」という評判がチラホラ聞こえ、観る気になったのですが、正解でした。今、一番ホットな作品かもしれません。

ライアン・ゴズリング分する主人公は、表はハリウッド映画のカーアクション専門スタントマン、裏は犯罪者が犯行現場から逃走する際のドライバーの請負仕事をしています。ところが、同じアパートに住む母子に情をうつしたことから、運命の歯車が大きく狂い始め————。

ここ数年、どんなに派手なアクション映画を観ても、全然エキサイトしなかったり、大音量の戦闘シーンの最中にウトウトしちゃうことが多くて、「ああ、もう年なのね、アクション映画についていけなくなっちゃったんだわ」と落ちこんでたのですが、それは杞憂でした! 私が悪かったんじゃないわ、映画がどれもこれもダメだったんだわ! そうよ、大音量でドンパチやってりゃいいってもんじゃないのよ! 静と動よ! 緩と急よ! 「あ」と「うん」よ!(…は違うか)

デンマークの監督さん(ニコラス・ウィンディング・レフン)なので、舞台となるロサンゼルスも定番の描き方をしていなくて、とっても新鮮。渋いす。「ヨーロピアン」す(←映画を観ると判るよ)バックグラウンドミュージックをベッタリ流すのを止めるだけでも、ずいぶん印象が変わるものなのですね。それだけ映像とカット割りと演出に力があるのだけど。

主人公、とことん寡黙です。「ソーシャル・ネットワーク」のザッカーバーグのセリフを「100」としたら、「0.7」ぐらいしかしゃべってないんじゃないでしょうか。アクション映画といえば、善玉も悪玉も、口からは弾丸トークをかまししつつ、バンバン銃を撃ちまくる、というスタイルが定着しちゃってて、そういうところも嫌いだったので、主人公の沈黙が気持ちいい、気持ちいい。砂漠にオアシス! 主人公と、いい感じの関係になる隣人の若いお母さんアイリーン(キャリー・マリガン)との会話も、セリフとセリフの間に、1拍どころか3拍ぐらい空きます。(男)「週末、予定ないんだけど・・・」(女)「・・・ニコニコ・・・」(男)「・・・・・・」(男)「ニコリ・・・」(二人)「・・・」アキ・カウリスマキの映画かっ! ちょうど、映画を観る前日、外国語を教える先生方の集まりに混じる機会があったのですが、さすが言葉でコミュニケーションをはかるプロたち、しゃべりにしゃべってました。素晴らしいなぁ、と感心しつつ、そのうちついてくのに疲れちゃって、一人で鶴を折っていた、というおしゃべり苦手人間なので、「いいんだよ無口でも」と言っているような、ライアンの笑顔に癒されました。

でも、その笑顔がくせ者!! 言葉に頼らないコミュニケーション、それはノンバーバル・コミュニケーション、つまり暴力なのだ! 凄いよ、静かでおとなしい、草食系のキャラだったドライバー(という役名なのよ、名前と言うより役柄よね。映画の中で、名前で呼ばれたこと、一度もないんじゃないかな。)が、一瞬で豹変し、爆発的なバイオレンスを発揮する場面。圧巻だよ。心の中で、「どひぇ〜」って叫んじゃいますよ(監督の他の作品未見ですが、バイオレンス描写に定評があるとか)。いや、やっぱり言葉が大事だよ。人間同士しゃべらなくちゃ、最後は暴力に頼ることになるのよ、という映画のメッセージ、しかと受け取りました(ウソです、そういう映画じゃありません、FYI)。

主人公は、家具のない部屋に住み、過去や人となりをうかがわせるものが何もありません。西部劇のクリント・イーストウッドが葉巻を口の端にぶらさげるように、楊枝をくわえてます(そして子どもに、「楊枝欲しい」?と差し出すドライバー。いらんっつーの! でもおとなしく受け取る子ども。素直すぎる!)。そして、一張羅の、背中にサソリの金糸の模様があるジャンパーを着込んでます。ハンドルを握らせれば、神業を発揮します。「哭きの竜」みたいな感じ? なぜサソリなのかというと、それが彼の性(サガ)だからです。カエルを刺さずはいられないのですって。

キャリー・マリガンのキャスティングについては、3つ評を読んだら、3つとも「ミスキャスト」って書いてありました。私は彼女で正解だと思います。こういうオリジナルなスタイルの映画を観ても、まだ女性キャラには定番を期待するのね、おっさん評論家たちは(含むロジャー・エバート)。ドライバーに仕事を提供するオヤジさん的な役に、TVドラマ「ブレーキング・バッド」のブライアン・クランストン、悪者のボスみたいな役に、アルバート・ブルックス、その相棒に、こないだコナンのお父さんを演じていたロン・パールマン、アイリーンの亭主で、刑務所からいきなり出所してくるヤクザ者に「エンジェル・ウォーズ」で施設の院長を演じていたオスカー・アイザックが扮しています。パールマンが経営するピザ屋で、なぜか中華料理を注文して箸とフォーチュン・クッキーを要求するアルバート・ブルックス。「ブロードキャスター」で汗をダラダラ垂らしていた純情アンカーマンの彼が、こんなにやさぐれちゃって…。

ライアン・ゴズリング、みんなベタぼめで、そのカリスマ性をスティーブ・マックィーンに例えています。いや、健さんでしょ、健さんっ。だんなはたけし映画を連想したみたい。

エレベーターの中、自分を狙う刺客の正体に感づきつつ、アイリーンと乗りこむドライバー。突然照明が絞り込まれたと思うと、アイリーンを角に引き寄せ、刺客に背を向けて長い接吻をします。そして、照明がまた明るくなると・・・。 エレベーター名場面のナンバー3、決定です。(1番と2番は「ブレードランナー」ですよ、おのおのがた)

ところで"Contagion"ですが、オールスターキャスト映画の中、ジェニファー・エールが一番輝いていました。またまた、クレジットを観るまで彼女だってわからなかったよう! 誰なの、このメリル・ストリープ似の素晴らしい女優さんは!? ってずっと思っていた…。

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9/30/11

ジェイ・レノの「トゥディショー」にアルバート・ブルックスが出たのですが、「ドライブ」で彼の演じるキャラクターが、とある人物の首をしめつけて脅す場面で、テイク14でその人が白目を向いて本当に気絶しちゃった時のエピソードを話していました。本編では削除されたけと、DVDにはきっと入るよ、とのことです。


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