2011年12月27日火曜日

"THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO"「ドラゴン・タトゥーの女」

原作は読んでいないけれども、オリジナル版は3作ともDVDや映画で観て、かなり強い印象を持っていたのでリメイクにはやや懐疑的でした。でも、デビッド・フィンチャーが監督するのだから、オリジナルとは違った、興味深い一本になるだろうという予想も容易につきます。そんなわけで、二律背反した気持ちを抱きつつ、この時期一番心待ちにしていた期待作として、イソイソ映画館に向かいました。


予想通り、映画は年配めの方々でまぁまぁ埋まっています。いつもの長い予告編が終わり、本編が始まりましたが、なんだか全然、話が違います。最初の2,3分は、「へー、ずいっぷん始まり方を変えたんだなぁ。これ、リスベスが調査してる1件っていう設定なのかなぁ。マイケル・ビーンか、しぶいキャスティングだなぁ」と思いながら観ていたのですが、やっぱり、どう考えても、これは「ミレニアム」シリーズぢゃない!! ていうか、「ミッション・インポッシブル」じゃん! ああ、トム・クルーズが出て来たよ。がーん、どうしよう。バカな自分がスクリーンを間違えた! でもいまさら移っても、冒頭を見逃すことになってしまう。ここはしょうがないからこのまま「MI:3」を観て、日をあらためて「ドラゴン」を観るか、と葛藤していたところ、パラパラと席をあわてて立つ人がいます。おや、間違えたのはわたしだけじゃないのかな、映画館の表示が間違えていたのかな、と思っていたら、なんと、映画館側が間違えたのは、かける作品そのものだったのです! 「いまから替えマース!」と係の人が叫んで知らせて来ました(でもこういう場合謝らないのよね、いつも)。隣に座っていたおばさんが「で、これは何の映画だったの?」と聞いてきたので教えてあげましたが、あんだけ宣伝やっているハデな人気シリーズでも、知らない人は知らないんだなぁ。結局2、30分以上遅れて、正しいフィルム(いやデジタルか今は)がかかったのですが、「まさかまた予告編から見せられるんじゃないんでしょうねぇ」とみんなで心配しあっていた通り、予告編から律儀にかかりました。つごう10本ぐらい、予告編を観てしまいました。げっぷ。

でも、待てば海路の日和あり。「移民の歌」の流れるオープニングシークエンスが、もの素晴らしいです!! もうこれだけで、映画代の価値あり、と思ってしまいました。やっぱりすごい映像センス、デビッド・フィンチャー。

全体としても、オリジナル版と比べて、メイド・イン・ハリウッドの底力を見せつける、エンタテインメント作品として完成度の高いものに仕上がっていました。より話が整理され、ヒロイン像も、オリジナルよりもさらにインデペンド&キックアスなキャラとして練り上げられています。例えば、冒頭のリスベス登場場面のお膳立てひとつとっても、映画としてドラマチックな見せ方を、充分に心得ている人たちが作っていることが一目瞭然です。

オリジナル版のリスベスは、主人公としては意外なほどやられキャラで(でもあとで倍返しするんだけど)、それも強い印象を受けた理由のひとつなのですが、でもだからといって、リメイク版が、ハリウッドの真綿でくるまれた骨抜きの作品になってしまったのかといえば、そんなことはありません。なにしろ「セブン」の監督ですからね、猟奇的な題材を、スタイリッシュで洗練された先鋭的な作品として、メインストリームに受け入れさせてしまう魔法の杖を持ってます。

一番の注目は、ノオミ・ラパスが作り上げ、熱心なファンも多いリスベスを、まだ役者として海のものとも山のものともしれないルーニー・マーラ(「ソーシャル・ネットワーク」)が、いかに違ったヒロイン像として提示してくれるのか、という点だと思いますが、どちらのリスベスが好きかと聞かれたら、たぶんたいていの人が、ルーニー・マーラ版を挙げるんじゃないでしょうか。つまり、こっちの方が少しだけ、とっつき安いリスベスになっています。それにしても、全然笑わないヒロインですね~、改めて。最後の方で、1度だけ、ほんのり微笑むだけ。後でオリジナル版を見直してみたいのですが、あっちもやっぱり、最後に1度だけ、ちょっと微笑んでました、同じようなシーンで。マーラ版のリスベスの一番好きなシーンは、朝、コテージの流し台の上に座り、足をステンレスの流しの中に入れたリスベスが、カメラの方を見つめるところ。そのカットだけ、面差しがジュリエット・ビノシュを思わせました。あと、食べ物にぜんぜん頓着しないで、栄養とか健康とか気にせず、とにかく手っ取り早く腹をみたせりゃいいみたいで、ハッピーミールばっかり食べてます。案外おまけ目当て? 

ミカエル像も、ハリウッド版の方が、よく練ってある感じでした。多分オリジナル版は、原作にすごく忠実に筋を追ったんじゃないでしょうか。映画のキャラとして、ハリウッド版のミカエルの方が、より面白く作られています。猫との絡みを入れるなど、とてもクレバー(猫、かわいいです、野良猫なのにミカエルにすごくなついちゃって、後でやってくる誰かさんの、伏線になってます)。「007」のダニエル・クレイグにこの役を振り、リスベスとの攻めと受けの関係をより際立たせたところなど、倒錯的でいいじゃないでしょうか。オリジナル版のミカエル役と感じが似ているステラン・スカルスガルド(スウェーデン人だから?)は、ミカエルではなくマルティンを演じてました。それから、依頼人ヘンリックの40年前の役を、ジュリアン・サンズがやってます。鼻筋とか、似ているかもね、クリストファー・プラマーと。

フィンチャー版も良かったけど、やっぱりオリジナル版の方が、好きかなぁ。実直なところがね。面白いのは、外国人のフィンチャー組の撮ったスウェーデンの方が、本家版よりも寒く、より雪深く、陰鬱な雰囲気を、ことさらに醸し出しているところ。そんなものかもしれませんね。それにしても、この話、まるでスウェーデン版「犬神家の一族」ですね。

オープニングが「移民の歌」ならば、エンディングは「Is Your Love Strong  Enough」と来て、またまたうなっちゃう選曲です。ブライアン・フェリーのオリジナル曲は、リドリー・スコットの「レジェンド」のテーマ曲でした。あら、トム・クルーズでつながったわ。

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