2012年5月29日火曜日

"Otter 501"

タイトルの"Otter 501"とは、とある赤ちゃんラッコに付けられた識別名のことです。カリフォルニア州のモントレーという町は、モントレー水族館やジャズ・フェスティバルなどで有名な海辺の町。私の住むサンタクルーズからは、車で1時間ほど南にあります。モントレー湾は、絶滅危惧種であるラッコが今も2700頭ほど生息する貴重な海域で、ここの水族館は、親からはぐれたラッコなどを保護し、一定期間飼育して、また海に戻すという活動をしており、501号もそんなはぐれラッコの一匹です。これは、ラッコ501号を偶然保護した若き女性と、501号の運命、そしてモントレー湾に住むラッコたちの生態をカメラに収めた、赤ちゃんラッコのように愛らしいドキュメンタリーです。



陸水生物学者の卵ケイティは、ウィスコンシン州から叔父の住むカリフォルニア州モントレーに、休暇に来ています。モントレー湾でカヤックを楽しんでいると、「ミー、ミー」という声を耳にしました。岩場をのぞいてみると、赤ちゃんラッコが一匹、はぐれた母親を求めて鳴いているではありませんか(この辺は再現フィルム。カヤックに取りつけたカメラからの映像が新鮮です)。携帯電話ではぐれラッコを保護する機関をすばやく検索して連絡するケイティ。やってきたのは地元のモントレー水族館のスタッフでした。

水族館が保護したラッコの501匹目であるこのラッコは、まだ生後1週間にもならない赤ちゃんです。母親からはぐれらたラッコの生存率は、高くありません。シニアスタッフが母ラッコに代わり、一日3時間501をグルーミングし、ミルクを与えて世話をします。人に慣れすぎないように、スタッフは顔を防護マスクで覆ったり、雨がっぱを着てシルエットをあいまいにするようにしています。保護活動を始めた当初は、人に慣れすぎたラッコを海に戻しても、3分の2は適応できずに死ぬか、再び保護されて全米の水族館で余生を送るかでした。ところが、数年前、赤ちゃんラッコを亡くしたばかりの母ラッコに、試しに保護した赤ちゃんラッコを預けてみたところ、そのラッコ、トゥーラは赤ん坊ラッコの世話をはじめました。こうして、トゥーラが育てたラッコたちを野生に戻すと、生存率は倍の3分の2に上がったのです。501号は、トゥーラが養育する12頭目(だったかな?)の赤ちゃんラッコになります。2頭を一緒の水槽に入れた最初の日、501号は怖がって人工ケルプ(海藻)の陰に隠れてしまいます(かわいい)。でも、3日目、観察カメラに写った映像は、トゥーラのお腹の上に乗った501号の姿。これから6ヶ月間、501号はトゥーラのもとで、グルーミングや海底の獲物の捕り方、食べ方など、野生に戻った時に自力で生きていく術をマスターしなければいけません。


一方ケイティは、水族館のボランティアとなってモントレー湾に生息するラッコの観察を始めます。30年代、西海岸では絶滅したと思われていたラッコが、50頭ほどの群れを作って浮かんでいる姿が確認され、以来生息数を増やす努力が施されてきました。しかし、その数は思うように増えません。人間が海を汚すために寄生虫に侵される率が増え、餌は減り、サメという強力な外敵もいます。近づきたがる人間達から逃げるためのエネルギー消費量もバカになりません(ラッコは体重の25%[だったかな?]を一日に摂取する必要があります)。私がよくラッコを見にいくMoss Landingという湾には船着き場があり、ヨットや船がひっきりなしに行き来しています。カヤックもたくさん通り、対岸から観察していると、轢かれないかといつもヒヤヒヤします。でも、赤ん坊をお腹に乗せた母親ラッコは、なぜか船着き場のあたりをウロウロするのです。不思議に思ったケイティが観察すると、母ラッコが赤ん坊を係留中のヨットから出ている板の上にヨッコラショと載せ、海に潜って餌取りにいそしむ姿を目撃します。うーん、賢い! さすが道具を使う動物! でも危険なことには変わりないんですけどね。ちなみにMoss Landingの群れラッコたちは全員オスで、若い衆からご隠居ラッコまでが縄張り争いをせず、仲良く群れて暮らすのは珍しいのだそうです。母子ラッコたちは、もっと奥まったElkhornという地帯に普段はいます。
Moss Landingのラッコたち(電気羊撮影)




ラッコの保護が大事なのは、何もかわいいからだけではなく、海藻を食べるウニをラッコが食べてくれる、という理由もあります。昔、ラッコはカリフォルニアにもたくさんいたけれど、ロシアが毛皮目当てに世界中の海でラッコを乱獲して絶滅しかけた、という説明のストップモーションアニメが出てくるのですが、ラッコを表すのにフワフワしたラッコ色の小さな毛玉を使っていて、それがすごく可愛かったです。あの毛玉、上映館で売ったらいいのに(^_^)


501を海に戻す前に、ケイティは499号と500号を海に放す場面に立ち会いますが、499号は翌日には識別信号が消え、500号は野生に適応できずに再び回収されます。辛い現実を思い知るケイティ。そしていよいよ、501号を海に戻す日が——。

映画は主に、ケイティが自分のフェイスブックにリアルタイムにその日の出来事の記録をアップしていく、という形を取っていて、それは悪くないのですが、ケイティがどアップでノートパソコンのカメラに語りかける映像がちょっと多すぎて、見終わった後、かわいい赤ちゃんラッコの姿よりも、ケイティのアップの顔の方が脳裏に焼き付いてしまって、予告編を観て「かわいいラッコの映像の洪水に、萌え死にに行く!」という決死の覚悟で行った私は、みごとに死に損なってしまいました。どうも、映画製作者たちはラッコよりも、なぜかケイティを売り出す方に関心が移ってしまったようで…。

でも、ラッコのかわいく、貴重な生態を捉えた映像作品であるのは確かで、ラッコ人気の高い日本でも上映される機会があったらいいなと思います。私はもちろん映画の後、さっそくピンクと黄色の監察をつけた501を探しに、Moss Landingに向かいました(^_^)

★公式サイト: OTTER 501
★ラッコ501の映像がいっぱい! YOUTUBEのチャンネル







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