2013年6月24日月曜日

"Monsters University"『モンスターズ・ユニバーシティ』

『トイ・ストーリー』シリーズとともに、ピクサーの2大看板を背負う『モンスターズ・インク』。その続編、『モンスターズ・ユニバーシティ』が、『カーズ2』『ブレイブ』と、このところ評価・成績ともにイマイチぱっとしなかった同社の、巻き返しを賭けて公開されました。

全米公開は6月21日金曜日。数日前から出始めたレビューは、なかなか高評価です。私は公開2日目、土曜日の11:30AMの回に観にいきました。上映館のDel Mar Theaterでは、2D版と3D版の両方かかっています。当然、3D版をメインの大きなスクリーンでかけると思ったのに、メインが2D版、2階の小さいスクリーンの方が3D版で、ちょっとガッカリ。2D版の方が人が入るのでしょうか? 客席も、2割程度の入りで、それも大人ばっかりです。まぁサンタクルーズはいつもこんな感じなので、これで全米での当たり具合を測ることはできませんが……(多分ブラピの『World War Z』を抜いて1位になりそう)。
劇場名が入ったステッカーをもらう
気を取り直して鑑賞。最初に映ったのは、雨模様の町並み。郵便ポストや信号機のアップ……ん、実写? いや、CGか。すごくリアルです。ピクサーらしからぬリアルCG路線にとまどいつつ見ていると、やがて、水色の傘が映ります。傘には、黒いマジックで落書きしたような顔がついてます。ああ、良かった! マジック顔の水色傘が、この短編映画の主人公です。舞台は大都会らしく(ニューヨークかなあ?)、夜の雨の中を、たくさんの人々が傘を差して、前屈みになって忙しそうに歩いています。人間の顔は、傘に隠れてほとんど見えません。せいぜい傘の柄を持つ手ぐらい。ディズニーの『シリー・シンフォニー』のように、セリフのない、無機物の奏でる叙情詩が雨の街中に展開していきます。ストーリーは、シンプルでかわいらしい。奇しくも、日本ではやはり、梅雨時の都会が舞台のアニメ作品『言の葉の庭』が公開されたばかりです。短編と中編(?)の違いはあるけれど、両者を見くらべてみるのも、おもしろいかもしれません。ちなみに私も最近、自分の作品用に和傘を作って、リギングで苦労したから、傘にはちょっと思い入れがあります。この短編(タイトル全然覚えてない!)の傘はあまり開閉しなかったけど、1回派手にオチョコになるカットがあって、観客に受けてました。ズバリ、今年のアニメ界のキーアイテムは「傘」だね。(ないない)

1ヶ月前から垂れ幕を貼る力の入れぶり
(こちらでは珍しい)
さてさて、素晴らしい短編による露払いの後、はじまりました『モンスターズ・ユニバーシティ』。たいてい、併映の短編は事前に映画祭などで観てしまっているのですが、今回はまったく何の事前情報もなく、まっさらな気持ちで鑑賞できました。でも、本編の方は逆に、仕事で事前に脚本を読んでいたので、ストーリーは1から10まで分かっています。それで自ずと、文字からどんな風なカットに起こされたのかが興味の焦点になりました。

脚本を読んた時の感想は、「素晴らしい!」でした。ウッディとバズに次ぐピクサーの名コンビ、サリーとマイクが息ピッタリの相棒になる前、はじめて出会った大学時代を描いた物語。ふたりは、最初から親友同士になったわけではありません。それどころか、お互いがお互いを本気で目の敵にしあうライバル同士だったのです。マイクが主人公なので、努力家のマイクに対し、恵まれた血筋と体格と才能にあぐらをかいて、何の努力もしないサリーは、脚本上ではかなり嫌なヤツ、という印象でした。ところが、あら不思議、これが映像になり、ジョン・グッドマンの声がつくと、ぜんぜん憎めない、愛嬌のあるデカブツさんになっちゃってるではありませんか! これが映像の、アニメーションの、ピクサーのマジックというものなのかあ〜。やってることは、脚本通り(当たり前だ)、極めて自分勝手で傍若無人、セリフもすごくきついことをマイクにいうのに、映像になると、割とサラリと流せてしまいます。きっと、これが実写の、生身の人間たちがやったら、生臭すぎて、脚本から受けた印象通りの、すごくつらい場面になったんだろうなぁ。改めて、アニメーションの特質について、気づかされました。逆に言うと、脚本段階ではすごくアクを強くしておかないとダメなのでしょうね。いっぺん、ピクサー作品を通しで全部、実写でやってみたら、かなり面白いことになるんじゃないかな。「本当は怖いピクサー作品」。

体の小さいサリーは、小さな頃からいじめられっ子で友だちもいません。でもいじけたりせず、達者な口を武器に、ポジティブ・シンキングで良かった探しをする、ポリアンナちゃんな子どもでした。体の大きな同級生たちにとって、マイクは格好のターゲットとなり、「怖がらせ屋」に憧れるマイクに、「お前は絶対なれない、すっこんでろ、あっちいけ」といじめます。それは、一生懸命勉強して入った憧れの大学、モンスターズ・ユニバーシティでも同じでした。サリーや大学の花形フラタニティ「ロアー」の面々からみれば、小さくてちっとも怖そうじゃないマイクは、ゴミ同然。そう、この世界では、人間の子どもを死ぬほど怖がらせる能力の高い者が、勝ち組だったのです。

映画の一番の悪役は、サリーでも「ロアー」の強面でもカメレオンのランディ(最初は気弱ないいヤツなのよ)でもなく、「怖がらせ」学部の学長、ハートスクラブル(ヘレン・ミレン)なのです。いつも、学生や教師を脅すように、コウモリの羽でバサーっと飛んで
現れるディーン・ハートスクラブル。マイクに面と向かって、「あなたは怖くありません!」とけんもほろろに宣告を下し、実力を試すチャンスさえ奪い取ってしまいます。ああ、あああ。分かるよ、マイク、君の無念。うちのカレッジの映画科の学長に、アニメ科(←まだ通ってんのかよ)の教師や生徒たちが、どれほどいじめ抜かれていることか。なにこれ、うちの学長がモデルなの? それとも学長ってみんなこうなの? 

シリアル。マイクとサリーの
マシュマロ。
学校でのいじめ、努力と才能。結構ね、シリアスなテーマをシリアスに扱っているのですよ。外見の楽しさ・かわいらしさに目を奪われて、なかなか届きにくいかも知れないけど、でもいじめられっ子が見たらきっと、分かるよね。大学が舞台で、ちびッ子にアピールできるのか、ちょっと心配ですが、モンスターとは名ばかりのモンスターたちはみんなかわいらしいし、キャンパス生活は楽しそうだし、子どもたちに「ワア、大学って面白い! 僕も大学に行ってフラタニティに入りたい!」って思わせられれば、しめたもの。

1作目と比べると、テクスチャがダンチに進歩していて、パステルカラーが基調の画面は、見ていてホントに楽しいです。1作目だって、公開当時はサリーの毛並みにビックリしたものなんですけどね。そして、やっぱり、3DCGと3D上映は、実写よりも相性がいいです。

わたしのお気に入りキャラは、むらさきの毛むくじゃら、ニューエイジ派のアート。夢日記をサリーにわたすカットは、みんなに受けてました。

あと、6本足のブタさん! ヤギ目でかわいい。

クレジットの後におまけ映像があります。

来週はこちらも人気作『Despicable Meの続編が公開されます。抜かれちゃうかな。

===================

翻訳で協力させていただいた本です。ノヴェライズのご執筆は佐野晶氏。よろしくね!


モンスターズ・ユニバーシティ (竹書房文庫) 

アイリーン・トリンブル ピート・ドクター アンドリュー・スタントン 
佐野 晶  


0 件のコメント: