2013年8月10日土曜日

"Elysium" 『エリジウム』

『ディストリクト9』のニール・ブロムカンプ監督、待望の第2作を、公開初日に観てきました。初日だけあって、久しぶりに半分以上客席の埋まっている回でした。

It's official. (←私が日本語を教えているティーンエイジャーの双子ちゃんお気に入りの表現) ニール・ブロムカンプ監督は、21世紀のポール・バーホーベン監督だ!



何もロボット警官が出てくるから、というわけではなく、モラルのしばりのない、えげつないバイオレンス、皮肉な未来世界、そしてなにより、主人公と仲間以外、気持ちいいほどセルフィッシュで冷血な人々———。こういった共通項が、バーホーベン作品を想起させます。

2154年、貧富の差はここに極まり、99,9%の貧民は環境汚染の進んだ地球、残り0.01%の富裕層はドーナッツ型の衛星エリジウムと、完全な住み分けが完了していた。地球に暮らすマックスは、車泥棒の前科があり、ロボット警官に目をつけられていた。今の職は、ほかならぬ自分たちを痛めつけるロボット警官の組み立て工場だ。その職場である日、扉の故障により致死量の放射能を浴びてしまう。ロボット医師の見立てによれば、あと5日の命だという。そのため、寿命が尽きる前に、なんとしてもエリジウムに密入国しないといけない。エリジウムには、どんな病気や怪我も5秒で治してしまう、奇跡の医療ポッドがあるのだ。

確か、監督が以前、職質を受けたか逮捕されたかの経験が基になっていると、どこかで耳にしました。『ディストリクト9』がアパルトヘイトのアレゴリーだったように、今作は健康保険問題、99%対1%問題、移民問題を抱えるアメリカ現代社会の写し絵になっています。加えて、民主党対共和党の図式まで入っています。国の安全を脅かす事件が起きると、弱腰な政策のせいにして、独裁体制を敷こうとする———アメリカに限らず、どの国でもどの時代でも、いわゆる「憂国の士」たちのやることは同じですね。『エリジウム』では、その筆頭役を、ジョディ・フォスターが演じています。これが、「オスカー女優最悪の演技!」と、評判がすこぶる悪いのです。フォスターの長年のファンのせいか、私は演技が悪いとは思わなかったのですが、いわれてみれば、「ここぞ」という演技の冴える場面も、確かになかったかも。つくりこめば、もっともっと興味深いキャラクターに出来たかも知れません。

『ディストリクト9』で主役を演じたシャールト・コプリーが、凶悪なサイコパスの点を買われてフォスターのアサシン係を務める役で出ています。なぜか日本刀を背負っているんですが。巷では、フォスターの役作りのためのなまりが変、とやり玉にあげられていますが、わたしにはこの人の南アフリカなまりの英語が、ききとれなくてききとれなくて。でもみんながみんなアフリカなまりだった『ディストリクト9』よりは、なんぼかましです。監督とは長年の友で、まだ14歳だった監督を、CGアニメーターとして雇ったのがコプリーだったんですって。 

ブロムカンプ監督はあいかわらず、移植跡が生々しい機械の人体埋めこみフェチぶりを発揮しています。あんなんだったら一発で感染症になっちゃうでしょうに。でも、ロケットペンダントとか、お花とか、案外乙女ちっくな小道具が好きなんですよね。

前作同様、映画は全然ダレなくて、すごく面白かったのですが、映画がフィナーレを迎えても、なぜかカタルシスが得られませんでした。ちょっとおセンチにもったいつけ過ぎちゃいましたし、ハッピーハッピーで万事解決、みたいな結末、『ブレードランナー』並みにそれまでの世界観を裏切っていないでしょうか。

今作のプロモーションの取材中、デーモンが、オバマ政権とトレイボン・マーティン少年殺人事件について語っているインタビューがあります。

Matt Damon: Obama 'Broke Up With Me,' George Zimmerman Is 'A Novice'


初耳映画の予告編がいくつも流されたんですが、立て続けに3本、「事実に基づいたストーリー」というクレジットが最初に出ました。トム・ハンクスの、海賊に襲われる貨物船の話、ロン・ハワードにレーサーの話、あと1本は、リドリー・スコット監督のだったか、デ・ニーロとトミー・リー・ジョーンズの共演作だったか。トム・ハンクスのがすごく面白そうで、もうそのままその映画の本編が始まっちゃってもいいくらいの、緊迫の予告編でした。東京国際映画祭のオープニング作品かしら?(確認しないで書いています)


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