2014年1月7日火曜日

"SAVING MR. BANKS"『ウォルト・ディズニーの約束』

2014年元日に見た1本目!

去年の暮れはディズニー関係の仕事をしており、ネットでいろいろ情報を集めていたら、たまたまこの作品の予告編を見て、「観にいこう!」と決めた作品です。それまでは存在を知りませんでした。

ひとことでいうと、ディズニーの映画『メリー・ポピンズ』の製作秘話。予告編(米国版)から、原作者のP・J・トラバース女子は堅物のイギリス女史で、映画の脚本や歌にダメだしばかりだしていたらしいのが分かります。ウォルト・ディズニーがどんな”ディズニー・マジック”を使って彼女を懐柔したか、というのがストーリーの肝。トラバースをエマ・トンプソン、ウォルト・ディズニーをトム・ハンクスが扮しています。エマトンが、窓から脚本をパーって放り投げるシーンとか、予告編の編集やカットのリズム感、ノスタルジックなセピア調のカラーパレットがいいなと思いました。


映画館は、年配のカップルが大半を占めていました。1960年代に製作された『メリー・ポピンズ』をリアルタイムで観た世代でしょうか。若者はこういう映画に見向きしないのかな。予告編の1本目が、『風立ちぬ』でした。うーん、全然引かれない……。ヒットしないんじゃないかな、アメリカでは。

ロンドンからアメリカはロサンゼルスに渋々やって来たトラバース女史。自分の書いた児童文学「メリー・ポピンズ」の映画化には反対だが、大好きな自宅を失うかもしれないほどお金に窮し、背に腹は代えられない。エージェントのすすめにしたがい、脚本の監修権を条件に、契約書にサイン(するかもしれない)ことにしたのだ。

そんなトラバース女史を、ディズニー・スタジオは最大限おもてなしする。空港までリムジンで迎えに寄越し(運転手はポール・ジアマッティ)、ホテルの部屋はディズニー・グッズで埋めつくされてあった。だが、トラバース女史には通用しない。「9つの子どもじゃないのよ!」とグッズを全部クローゼットにしまい込み、「パメラ!」と米国流のフレンドリーさで呼びかけられれば「ミセス・トラバースよ」といちいち訂正する。脚本家と、音楽担当のシャーマン兄弟(ジェイソン・シュワルツマンとB・J・ノヴァク)とスタジオの一室にこもって監修作業に入ると、今度はドーナッツやクッキーやゼリーのおやつ責めにあう。おやつにも「ノー」、歌にも「ノー」、キャスティングにも、衣装にも、美術にも全部「ノー!」を出す女史に、スタッフはお手上げ状態。ディズニーはトラバース女史と親交を深めようと、自らディズニーランドを案内して回るが……。

原題の"SAVING MR. BANKS"のバンクス氏というのは、メリー・ポピンズが世話をする子どものお父さん。邦題が『ウォルト・ディズニーの約束』なのは、ディズニーが自分の子どもに『メリー・ポピンズ』を映画する、と約束したことから。この映画では、バンクス一家のモデルは、トラバース女子の子ども時代の自分の家族ということになっています。子どもの頃、トラバース一家はオーストラリアに住んでいて、銀行業をしている父親を、パメラ(本名はパメラじゃないのだが)はたいへん慕っていたのです。夢想家で超チャーミングだが、無責任でアル中の父親を、コリン・ファレルが扮しています。映画は、ロスに来ているトラバースと、オーストラリアの子ども時代を、行ったり来たりします。子ども時代のシーンで、ほんのちらっとだけ、メリー・ポピンズのモデルになったナニー(乳母)が出て来ます。演じているのはオーストラリア女優のレイチェル・グリフィス(『シックスフィート・アンダー』『日陰者ジュード』)。そういえば、エマトン自身、メリー・ポピンズばりの乳母役、演じてますね。『ナニー・マクフィー』で、コリン・ファースと共演して(^-^)。

この映画のキャスティングはどれも絶妙で(トム・ハンクスのディズニー役は実は不評なんですが)、日本の観客は、スタジオの受付嬢を演じた女優さんを知る人はだれひとりいないと思いますが、彼女はここ数年、アメリカのTVコマーシャルにいくつか出ていて、特徴的な声とクリクリした目が印象的で、それで抜擢されたのでしょう。

父親を愛すれば愛するほど、辛い思い出に今でも苦しめられるトラバース女史。ディズニーは、そんな彼女に、「もう開放してあげてもいいんじゃないの。楽しい思い出のほうを残せばいいじゃない」といいます。(←すごい意訳です)これはすごく、ディズニー作品の世界観を言い表していますよねー。「陰」を排除した「陽」だけの世界——それは悪いことなのかい? ディズニーのトム・ハンクスが、観客に迫ります。

評価はかなり高いです。わたしも”砂糖がクスリになると思いこませる”(どこかの評論家の言いまわし)ディズニーの手法にすっかり丸め込まれ、おいおい泣いちゃいました。ああいうお父さんと子どもの話に弱いですねん。夫は、ぜんっぜんつまらなかったそうです。

ある時、父親のことを思いだして寝つけなかったトラバース女史が、拒否していたミッキー・マウスのぬいぐるみをだっこするシーン、そこで「キュン」となるか、「ケッ」となるかが、この映画を受け入れるかどうかの試金石カットだと思います。地元の映画評論家は「ケッ」とした派らしく、「この映画もいつものディズニーと同じでうそっぱちばかり!」と書いてました。世界を旅した冒険家で著名ジャーナリストの弟子だったトラバース女史が、ミッキーのぬいぐるみをだっこして寝たりするか! だそうです。

そんな評論家氏のオススメが、これ。"Escape from Tomorrow"(『エスケイプ・フロム・トゥモロー』)。


エンドクレジットのところで、実際にトラバース女史が脚本監修会議中に録音した音声が流れます。









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