2014年2月20日木曜日

"Frozen"『アナと雪の女王』

今年のアカデミー賞長編アニメーション賞の大本命です。すでに、ゴールデングローブ賞、BAFTA、アニー賞などを受賞済み。

アンデルセンの「雪の女王」を下敷きにし、北国の王家に生まれた姉と妹の物語に仕上げたディズニーのミュージカルアニメーション。原作では、雪の女王に攫われた幼なじみの男の子カイを取り戻すため、純粋無垢な少女ゲルダが旅に出ます。ディズニー版では、雪の女王その人と妹のお話へと、大胆に変えています。

アメリカでは、感謝祭ホリデー期間の昨年11月末に公開されました。公開前日、午後7時に先行上映が1回だけあり(普通は話題作は公開日の深夜12時にやるのですが、これはなぜか7時のフライング特別扱い)、その時に観にいきました。ディズニー映画の大ファンだから……ではなく、ノベライズのお仕事をいただいたからです。



そのため、脚本、ジュニア向けのノベライズの両方を事前に読んでから映像を観たので、アニメーターたちの職人芸の凄さがよく分かりました。文字による描写から、映画の舞台(地形、自然、建築物、ファッション)やキャラクターたちを構築する技量——1の文章を10にも100にも膨らませ、行間を動きの想像力で埋め、脚本中の弱い部分を考え抜かれた美しいデザインときめ細やかな描写力で説得力を持たせ、観客に疑問を抱かせる暇を与えることなく納得させる——に、脱帽です。アナたちの仕草やリアクションの、すきのない動き。脚本には記述のない、ちょっとしたあんな仕草、こんなアクションが、ストーリーやキャラクターを、どれほど生き生きと、魅力的にしていることか。何度観ても驚嘆する、雪や氷の美しいレンダリング。私はCGもかじったので、CGであのクオリティを達成するのがどれほどの手間か、どういう課題をクリアしなければいけないか、少しは分かります。

 冒頭に登場する、ちびのクリストフとスヴェンのかわいさに、まずやられました。文章では、ただの「少年とトナカイの子ども」としか書かれていないし、事前に公表されているイメージは成長したクリストフとスヴェンだけでしたから、スクリーンではじめて子ども時代の両者を目にすることになります。

 オラフにしても、ティーザーや文章でのオラフは好きじゃなかったのに、声をあてたジュシュ・ギャッド(『サウスパーク』のクリエイターが作ったブロードウェイミュージカル『The Book of Mormon』でブレイク)が絶妙で、一気に好感度が増大しました。訳すときもノリノリで。あと書いてて楽しかったのは、山の雑貨屋オーケンの場面。オーケンがアナにおまけで「ルートフィスク」という魚の漬け物をあげるのですが、私が日本語を教えている双子ちゃんが、一昨年、そのノルウェーの未知の食べ物について教えてくれたことがあります。水酸化ナトリウムに漬けてある、すごく臭い食べ物、とかなんとか。ホンマかいなと話半分に聞いてましたが、実在するのねん。アナはあの後食べたのでしょうか、気になります。

それから、ミュージカルの命、歌も素晴らしかったです。旋律が耳になじみやすく、印象深いのはもちろん、歌詞が物語のテーマや肝を、意外なほど含蓄深く語っていて、脚本を読みながら、音楽担当者がストーリー作りにどれほど関わっているのか興味を覚えたのですが、インタビュー記事などを読むと、スカイプを通じて密に打合せをしていたようです。私が読んだ版の脚本にはなかった歌が本編では1曲増えていて、最後の最後まで手を加える姿勢がうかがえました。かなり変わってるシーンも1箇所ありました。

公開後二ヶ月半ぐらい経つのに、いまだにトップ10入りしている大ヒット作ですが、実は公開一週目は1位を取れませんでした。でもその後1位にアップし、その後もずっと上位をキープ。主題歌「Let It Go」がオスカー主題歌賞にノミネートされたのを受け、1月には"Sing along version"を上映してさらにテコ入れを図り、これがまた大当たり。大ヒットの勝因は、宣伝の初期、「姉妹の葛藤の物語」という男の子にはあまりアピールしない内容を隠し、スヴェンとオラフを前面に出して坊ちゃんたちへのしきいを低くしたのもある程度奏功したのだろうけれど、リピーターもかなり貢献しているんじゃないかな。口こみで、お母さん同士の間で評判が広がったのもあるでしょう。サントラもビヨンセを抜いたとか、ノベライズも児童書部門のベストセラーになったとか、とにかく当たりに当たっています。今ディズニーストアに行くと、一日じゅう本作のサントラがかかってます。わたしは前売り券についているキーホルダーが欲しいよ……(アメリカにはそういうサービスは一切ない)

Jimmy Fallon, Idina Menzel & The Roots Sing "Let It Go"
エルサの声と歌を当てたイディナ・メンゼルが、コメディアンで人気司会者のジミー・ファロンたちと学芸会の楽器を使って歌う、かわいい"Let It Go"。

こんなかのオラフが超かわいいよ!
もちろん歌も痺れる。


           アナと雪の女王 (竹書房文庫) 

日本語版のノベライズは、竹書房文庫より、2月20日発売です。脚本とジュニア向けのノベライズを組み合わせ、大人の読者でも興味深く読める内容に仕上げています。映画の中では進行上触れられていない部分、割愛された部分、掘り下げられなかった部分なども、小説版で詳しく語られています。例えば——

エルサの「禁断の力」の源は!?
アナの孤独と苦悩
アレンデール王家の秘められた過去とは!? 
トロールの正体とは?
北の山の伝説とは?
クリストフの過去
姉妹の葛藤と絆
カイとゲルダ much, much more!

物語をより掘り下げるため、底本のほかにディズニーからのガイドライン、2枚組のサントラ、"The Art of Frozen", "Frozen Essential Guide"などを参考にしています。もちろん、映画本編そのものから、底本にはないアナたちのこまかい仕草、セリフ、行動などをできるだけ取りいれて、文章を読みながらその場面を活き活きと思い描けるように、そして映画を鑑賞したとき、より深く物語や、仕草に隠された登場人物の心理などが理解できるように留意しました。サントラには未使用の曲がいくつも収められており、とりわけアナとエルサの「事件前」の日常生活の様子、姉妹間の葛藤、アレンデールに伝わる伝説など、非常に参考になりました。映画本編ではかなり薄められていますが、結構激しく姉妹同士でケンカしてるのが、面白いです!

本編が繰り返しの鑑賞に耐えるように、このノベライズが映画を観る前も、観てからも、よいコンパニオンになってもらえればと思います。よろしくね。


粘土と爪楊枝で作ったオラフ



0 件のコメント: