2015年12月31日木曜日

"Carol"『キャロル』

やっと観れました、『キャロル』。主人公の設定(1950年代の東海岸のデパートで売り子さんをしている)が似通っていて、間違えて『ブルックリン』を観に行っちゃった(アホ)のは数週間前のことです。サンタクルーズでは、本作はクリスマス・デーの公開でありましたとさ。

原作は、『太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミス。『太陽〜』のトム・リプリーが中年になって登場する『アメリカの友人』がすごい好きで、ブルーノ・ガンツに一時はまっていましたよ、そういえば。どうでもいいけど(^_^;)。 ハイスミスが別名義で書いた小説を、『エデンより彼方に』(ああ、ありました! そんな映画)のトッド・ヘインズが映画化しました。



ミステリー作家の書く恋愛ものらしく、全編を緊張感が覆い(それをうまくスクリーンに映しだした流麗なカメラワーク)、次にどんな展開になるのか、謎を含んだストーリーテリングが特徴的で、そのhauntingな感覚が、観終わった後もいつまでも尾を引きます。グレアム・グリーンの『ことの終わり』も、まさにそうでしたよね。

クリスマスシーズン。デパートのオモチャ売り場で働くテレーズ(ルーニー・マーラ)は、4つになる娘のためにお人形を買いに来た、裕福そうな美しい婦人(ケイト・ブランシェット)に心引かれます。彼女が店に忘れていった手袋をテレーズが郵便で届けると、その婦人、キャロルから売り場に電話がかかり、食事に誘われます。その後、自宅に招かれたテレーズは、キャロルと離婚手続き中の夫との言い争いを目撃してしまいます。夜遅く、キャロルに駅まで送られ、一人電車で帰るテレーズのほおを、涙が伝います。その涙は、なにゆえなのか——。

セリフは少ないです。テレーズとキャロルは、問わず語りに以心伝心するから。でもそれだけに、ひとことひとこと印象的で、そしてふたりとも(とくにテレーズが)慎重に、言葉を選び、途切れがちに話すので(それは自分で自分の気持ちがよく分からないから)、どの会話も全身耳ダンボで聞き入ってしまうし、ふたりの行動や表情に、釘付けになります。テレーズは、キャロルと出会うまでは、男性の恋人がいて、別に同性愛者じゃなかったのですが、古来より縁は異なもの味なものってぇいいやして、人生何が起こるか一寸先は、お釈迦様でもわかりゃしません。いきなり江戸っ子になっちゃったりもいたしやす。

ほかに観たい映画がいくつかあったのですが、すごく迷ったすえに、この映画にしてよかったです。クリスマス時期に観たい映画です。

映画冒頭、すでに知りあいらしいキャロルとテレーズの短いシーンがあって、その後、それより少し過去の、ふたりのなれそめから順を追って描かれ、最後に冒頭のシーンにもどるという構造になっているのですが、多分、冒頭と最後の同じシーン、2回、別に撮ってます。微妙に演技の間合いとショットが違いました。

それで、冒頭から過去の話に引き戻る場面転換が、テレーズが車の窓から眺める夜の街並みから、鉄道模型のセットに変わるのですが、それは、テレーズの勤めるデパートのオモチャ売り場の鉄道模型なのです。キャロルが買いに来た人形はあいにく売り切れだったので、「あなたが4つの時、何が欲しかった?」とテレーズに聞くと、「鉄道模型」という返事が返ってきて、それで人形の代わりに鉄道模型を買ったのでした。あそこの場面転換が好きって書きたかっただけなんですが(^_^;)。

サンタクルーズの美術館で毎年クリスマスになると
展示される鉄道模型セット。
(映画と関係ないです! 鉄道模型が好きってだけ!)

とても良かったです。後ろに座った年輩の女性は、キャロルのキャラクターが好きになれない、と言ってましたが(^_^;)。自分のなかで大事にしたい映画です。でも、間違えて観ちゃった『ブルックリン』は越えなかったかな。あれは本当に"マジカル"な一作だったから。

ハイスミスと原作については、原作を翻訳された柿沼瑛子氏(アン・ライスの一連の著作でおなじみ!)の、この文章が面白いです。
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20120706/1341526726
テレーズ役は、当初はミア・ワシコウスカだったのですね。ルーニー・マーラで正解だっとしか言えません。ミアはその代わりに『クリムゾン・ピーク』に出たのね。





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