2015年12月24日木曜日

"Danish Girl"『リリーのすべて』

1920年代のコペンハーゲンで、ある日「自分は男性の体に閉じこめられた女性である」と自覚した、実在の人のお話です。『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞を受賞したエディ・レッドメインが、その人物、アイナー(リリー)を演じ、『英国王のスピーチ』のトム・フーパーが監督しています。

愛する妻のゲルダとデンマークのコペンハーゲンに暮らすアイナーは、風景画家としてそこそこの評価を受けていた。ゲルダも肖像画を描く画家だが、鳴かず飛ばずだ。だが、遊び心で夫に女装させて描いた肖像画が画壇の眼鏡にかない、パリに招かれるまでになる。一方それがきっかけで、アイナーは自分が本当になりたいのは女性だったことを悟る。



当時は性同一性障害への理解などはほとんどなかったため、医者に診てもらっても矯正しようとするか拘束しようとするかのどちらかで、しかも放射線を当てるとか、頭蓋骨に穴を開けるとかいった滅茶苦茶な治療法で、そのたびに客席で軽い悲鳴が起きていました。スペクターの拷問か!

まず挙げたいのは、『スポットライト』とは対照的に、『英国王のスピーチ』もそうだけど、とても映像の美しい映画でした。もともと中性的というか、両性的な容貌のエディ・レッドメインの女装もきれいです。

でも、感想は、ひとことでいうと、「悪いけど、君の気持ちは分からないよ」。性同一性障害の人の心情が分かるのかな、主人公に感情移入して疑似体験できるのかな、と期待して足を運んだのに、分からなかったです。エニグマは解読されず、映画が終わって残ったのは「なぜ?」という疑問と、なぜだかとても人恋しい気持ちのみ。しょんぼり。

一途な少女ゲルダの
お話を電気羊訳で読もう!
「雪の女王」竹書房文庫
妻のゲルダ役は、"Ex Machina"でエヴァに扮したアリシア・ヴィカンダー(分からなかった!)。「雪の女王」で、雪の女王に心を凍らされ、連れ去られた友だちのカイを必至で取り戻そうとする少女と同じ名前、ゲルダ。愛する夫アイナーを、リリーといいう雪の女王にさらわれ、凍った心を必死に解かそうとするけれど、かなわなかった哀しいゲルダ。絵にするぐらい、リリーを受容していたのだから、リリーさえ応えてくれてたら、女性になってもbetter halfでいられただろうに……。ゲルダがよろめきかける、アイナーの旧友を演じた役者さんがすごく好みだったのですが、役名を覚えていないので、俳優さんの名前が分からない(^_^;)。リリーとゲルダを心配して病院の固いソファーでひと晩つき合っちゃうぐらい、いいヤツでした。

アイナーは何が何でも女性になりたくて、やがては赤ちゃんを産みたいとまで願う。ひとり、それを実現した人物を知っている。オーランドーっていう名前で、創作者は異性と結婚していたけれど、本当は同性愛者で、入水自殺しちゃったんだよ。

アイナーとゲルダは小型犬を飼っていて、それでなのか、「存在の耐えられない軽さ」を連想しました。「存在の〜」の主人公夫婦も犬種は違うけど犬を飼っていて、そして二人の間に割りこむ影の女性がいました。リリーと違ってこちらは生身の女性でしたが……。「存在の〜」は今でも時々思い出すぐらい印象深い映画だったけれど、これはそこまでのダイナミクスを生めていなかったな。でも人に勧めないかと言えば、観ておくべきだと答えるだろう、アンビバレンツな思いを誘発する映画ではあります。

『スポットライト』の時に起きた停電騒ぎでもらったチケットを使って観賞。

邦題を目にしたとき、アゴががくんと来たわ。

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