2016年7月22日金曜日

"Hunt for the Wilderpeople"


ニュージーランドの人気作家バリー・クランプが1986年に書いた“Wild Pork and Watercress”という本が原作。



監督は『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』のニュージーランド人監督タイカ・ワイティティ。手腕が認められ、『マイティ・ソー』三作目の監督に抜てきされました。Rotten Tomatoでは、100%の”Fresh”判定。


ニュージーランド。身よりのない少年が、人里離れた山小屋に暮らす中年夫婦に引き取られる。リッキーという少年は手のつけれられない問題児で、里親をたらいまわしにされ、ここが最後のチャンスだった。だがその晩さっそく家を抜け出したリッキーは、山中で一夜を明かす。翌朝、里親のベラおばさんは犬を連れて寝ているリッキーを見つけるが、責めるでもなく、朝食を食べさせに連れ帰る。ベラの亭主ヘック(サム・ニール。彼はオーストラリア人俳優)はリッキーを邪魔者としか見ていないようで、たいてい無視している。

 優しいけれど銃やナイフで野ブタを仕留めることもできるタフなベラおばさんになつき、夜もお気に入りの水枕(!)を抱えてベッドで眠れるようになったリッキー。誕生日には、おばさん作の歌を歌ってもらい、ケーキのろうそくを消して、プレゼントに子犬をもらった。ここでの暮らしになじんできた矢先、ベラが突然、心臓発作で死んでしまう。母親代わりの人間がなくなったためにここへは置いておけず、リッキーはソーシャルワーカーが迎えにくるという通知がヘックの元へ届く。次は少年刑務所行きになると思ったリッキーは、自殺したように見せかけると(その拍子に納屋ごと全焼させてしまう)犬のトゥパックを連れて山の中に逃げ出した。だがすぐにヘックに見つかってしまう。ふたりで憎まれ口をたたき合いながら歩いていると、リッキーの挑発にかっとなったヘックが、木の根に足をひっかけて倒れ、骨折してしまう。へたに動けないヘックはいやいやながら、リッキーと山中での行動をともにすることになる。一方、リッキーを訪ねて来たソーシャルワーカーは、ヘックがリッキーをさらったと勘違いして二人の捜索願を出す(リッキーの超適当な自殺工作は一発でバレる)。

 なんとか歩けるようになったヘックとリッキー(その間何日も経ってるはずだがそのへんは省略されている)がプレハブの狩猟小屋(かな?)を見つけて休んでいると、三人組のハンターが入って来た。ふたりに捜索願いが出ていることを知っていたハンターたちは、ヘックを捕まえようとするが、リッキーが機転を利かせ、ふたりで逃げ出すことに成功。その後、うやむやのうちに二人の捜索活動が本格化するが、なかなか見つからない。リッキーがハンターたちにベラベラしゃべった話からヘックを児童虐待者だと勘違いした世間は、やっきになってふたりを探そうとして、ニュースになったり、ヘリを投入したり、どんどん大がかりになっていく。ヘック&リッキー対国を挙げての捜索隊のハンティング、この先どうなるの!?

リッキーはすんごく太ってて(ポケモンのカビゴンみたい。マオリ族の血が入っている)、都会暮らしのすれっからし(ラップミュージックが好き)でちっともかわいげがありません。ヘックは暴力的ではないけれど粗野で、妻のベラ以外には心を開かないへんくつ者。あとで判明しますが、字が読めず(リッキーそれをからかってヘックが骨折)、昔、人を殺めた咎で刑務所に入ったこともあります(リッキー尊敬)。そんな世間のつまはじき者のふたりを拾ってくれたベラを、ヘックは「救助犬」と形容します。

肥満児と偏屈じじいの道中記というと『UP!』を連想します(犬も出てくるし(^_^))が、やっぱり逃避行をともにするうちに、ゆっくり、ふたりの間に絆が生まれて行きます。最初はクソ生意気で全然かわいげのないリッキーをとにかく嫌っていたヘックも、「お前はすごく人好きがする子だから里親がすぐ見つかるよ」となぐさめるまでに。確かに、リッキーの一筋縄ではいかない性格が映画にユーモアを与えていて、捜索隊から隠れているときに『ロード・オブ・ザ・リング』みたいと面白がったり(ニュージーランドだしな)、俳句を詠んだりと意外な趣味も持っています。

ベラおばさん以外、リッキーを気にかけてあげた人なんてだれもいなかったのに、行方不明になった途端、国中がやっきになって探そうとするのが皮肉です(でも映画自体にシニカルなところは皆無。捜索を指揮するソーシャルワーカーのおばさんさえユーモラス)。逃亡生活中、ところどころにある無人の狩猟小屋を漁って缶詰やトイレットペーパー(都会っ子リッキーには必須!)を漁ってる場面で、とつぜん「出前一丁」の袋が映りました。残念、ヘックのお眼鏡にはかないませんでしたが。


わたし、こういう映画が観たかったのです😭。『ロブスター』『ジーニアス』『ザ・シークレット・ライフ・オブ・ペッツ』と立て続けに不作で欲求不満がたまっていたので、ひとしおうれしいです。

予告編ではそれほど惹かれなかったこの映画を観る気になったのは、映画館でかかる「携帯電話の電源を切りましょう」というお知らせの、ヘックとリッキー版を観たためです。ふたりがキャンプをしていると電話が鳴って、ヘックは最初リッキーを疑うのですがリッキーはしらを切るので、観客の方に顔を向けて怖い顔をするというコントで、無言でいろんなジェスチャーをするリッキーが面白のです。クリップを探したけれど見つかりませんでした。

こっちの予告編(オーストラリア版)は面白いです。観てみて。



監督さんのことば。冬の真っ只中のニュージーランドロケは過酷で映画「レベナント」を思い浮かべて欲しいけど、ただしデカプリオは12歳のニュージーランド少年です、だって。




原作は翻訳されていないので、大統領とフィンランドの野生児少年との逃避行『ビッグゲーム』を代わりに読もう!





ダン・スミス (), 有澤 真庭 (翻訳)

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