2016年8月24日水曜日

"Expanse"『エクスパンス ー巨獣めざめるー』

これは映画ではなくドラマシリーズです。SF専門チャンネルSyfyが2016年はじめに放映しました。” Leviathan Wakes”(「巨獣目覚める」)というSF小説の前半部分をシーズン1、後半部分を来年放映予定のシーズン2で描く構成です。原作自体が”Expanse”というシリーズになっていて、6冊分あります。邦訳は、1巻目の「巨獣目覚める」が上下巻でハヤカワ文庫より出ています。

人類が太陽系まで進出するようになった23世紀の未来。地球、火星、外惑星連合の三つに分かれた勢力は、微妙な政治的・軍事的均衡を保ちながら発展を続けてきた。あるとき、主人公ホールデン(スティーヴン・ストレート)の乗っていた氷運搬船が正体不明の戦闘船から攻撃を受ける。生き残ったホールデンとわずかな乗組員は敵の正体をつきとめてかたきをとろうと奮闘を始めるが、彼らのうかつな行動のせいで三つの勢力の間に火種が生まれ、一触即発状態に。一方、小惑星ケレスの刑事ミラー(トーマス・ジェーン)は、行方不明になった月の大財閥令嬢の捜索を命じられる。令嬢ジュリー・マオ(中国系)は親に反抗してひとり外惑星に飛び出し、ゲリラ活動に身を投じていた。捜査を進めていくと、どうやらジュリーはホールデンの船が襲われるきっかけになった宇宙艇に乗っていたのが判明する。2つの出来事の結びつきが明らかになるにつれ、やがて人類は、未曾有の事態に直面することになる——。


ドラマがとてもよく出来ていて、続きが気になって来年まで待てなくて翻訳本を読んじゃいました。すると、重要人物の一人が本には出てこなかったので、多分シリーズ2冊目以降に出てくるのを前倒ししたのうだろうと思って、2冊目を読んだら、やっぱりそうでした。本では外惑星連合と火星側の動きだけで展開し、地球側の動きはほとんど描かれないんですが、ドラマでは地球の政治家たちがマキャベリズムを展開するのです。その代表格がサリーをまとったインド系の老婦人で、演じているのが『24』のテロリスト・マザー役が印象深いショーレ・アグダシュルー。

原作もドラマも、ジャンプスーツ姿のアジア系の女性(ジュリー・マオ)が宇宙船の狭い一室に閉じこめられている場面から始まります。シチュエーションは不明ながら、どうやら戦闘中のような音が響き、長期間にわたって幽閉されているらしい女性は壁を叩いて「出して!」と懇願したり、袋から水滴を出して渇きをしのいだりしています。重力がないため、彼女の黒髪は水中のようにフワフワ漂い、水滴も空中に浮かびます。やがて、なんとか脱出できたジュリーが無人の通路を通り、機関室に達すると、空間を蛍のような青白い発光体が漂い、機関部はツタ状の物質に覆われています。唖然として見ているジュリーの前で、その一角から青い物質に覆われた人間の上半身が飛び出して苦悶の叫びを上げ……。

 と、『エイリアン』のようなホラー要素もはらんだこの作品に、ジュリーの大口開けっぷりに見惚れたときにはもう画面に釘付けです。人間が正体不明の青い物質に「感染」すると、全身に青い網目状の物質が覆い、口や目などから結晶状の物が生えてきて、ちょっとJ・G・バラードの『結晶世界』を連想してしまいます。原作では「茶色の嘔吐物みたい」と表現されていたので、変えたのは英断ですねー。そんなのテレビ画面で観たくないわー。

原作は、「ホールデン」と「ミラー」の章が交互に進んでいく構成で、刑事のミラーの方の話は、孤独でしょぼい中年刑事という人物像からして、ハードボイルド調になっています。後ろは刈り上げ、片側の前髪だけ伸ばしてフェドーラ帽を被っているミラーのビジュアルはかなり独特なのですが、ジュリー・マオの行方を追っているうちに、いつしか彼女に入れこんでいく彼に、こちらも肩入れいしてしまいます。これがまた、ホールデンとは水と油の相性で、それが2巻目のプロットでも引きずっていくのが憎いです。

原作は二人の若手作家による共著なのですが、一人が『ゲーム・オブ・スローン』のジョージ・RRマーティンのアシスタントをしていたそうです。どうもクロサワ映画ファンらしくて、ブシドー(武士道)がどうとか、ちらほらその手の単語が出て来ます。主要キャラクターの一人の名前はナオミ・ナガタ(いろんな血が混じっていて外見は黒人っぽい)で、ドラマオリジナルのキャラとしてケンゾーという密偵も出てきました。

邦訳が出てないので2冊目はしかたなく英語で読みましたが、700ページぐらいあって、しんどかった……。ドラマに出て来たキャラクターは、もちろん演じた俳優たちで想像しながら読んだのですすが、2巻目ではじめて出てくるボビーという大女の火星軍戦闘員は、『ゲーム・オブ・スローン』のブライオニー(だっけ?)を演じた人を想像しながら読みました。中国系の女の子が行方不明になるという導入がシリーズ1巻目を踏襲していて(今回は幼女なんですが)、ところどころ、ややcheesyになってしまっていたけれど、面白かったー。2巻の最後のページに、ミラーが出てくるんだよね。続き読みたいな。翻訳出ないのかなあ? ドラマの方は、もし観る機会があったら是非観てみてください。『ギャラクティカ』みたいのが好みだった人は、きっと気に入ると思います。

★オープニングシーン観られます↓




☆追記☆
Netflixジャパンで『エクスパンス ー巨獣めざめるー』の題名で配信が始まった模様! 字幕付きでうらやましいぞ。

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