2017年10月20日金曜日

"Battle of the Sexes”『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

1973年、女子テニス界でトップクラスのテニス選手ビリー・ジーン・キングと、往年の名選手ボビー・リッグス(当時55歳)が対戦し、”The Battle of the Sexes”と呼ばれた男vs女のエキシビションを映画化した作品。監督は『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサ・・デイトン&ヴァレリー・ファリスで、キング夫人をエマ・ストーン、リッグスを『リトル・ミス・サンシャイン』でも起用したスティーヴ・カレルが演じています。

なぜそんな試合が行われたのか。映画では試合にいたるまでの過程をキングとリッグスほぼ均等に時間を割き、丁寧に描いています。映画から得た印象では、1、リッグスの性格(ギャンブル好きで過剰な自己演出好き)。2、男女同権運動が高まっていた当時の機運の、ふたつが主な要因だったようです。男性選手よりも報酬が格段に少ないことに異を唱え、女子テニス協会を設立したキング夫人は、リッグスにとって格好の標的でした。


映画がはじまってすぐ、白いスコート姿でラケットを振るストーンの姿に郷愁を覚えます(「エースをねらえ!」にはまった口)。ストーンはテニスの経験がなく、トレーナーについて岡ひろみばりに(?)猛特訓したそうです。映画のなかでそれらしく見えるのは、ひとえに超優秀なトレーナーたちのおかげ、とトーク番組で言っていました。当時と同じ木のラケットで練習したから(今は木製じゃないのか)、パブリックなテニスコートで練習したときに隣のコートの人から変な目で見られて、「わたしはhipstarになりたいわけじゃないのよ!」って閉口したみたい。最後のほうでちょっとだけ今のラケットを使ってみたら「あ、当たる!」と感激したそうです(^_^)。ど素人の彼女のためにトレーナーが技(?)にあだ名をつけて、ラケットを上に振り上げる動作を「オーレ!」、胸のあたりでボールに当てる動作を「ビザを給仕!」と叫んで指示する様子を、身振りつきで面白く説明していました。キング夫人は素晴らしく陽気な人柄らしく(彼女もいくつかトーク番組に出演していましたが、確かに)、彼女の自宅には”It’s good to be a King”と書かれたマグカップがあったとか(^_^)。いっしょにテニスの試合を観戦して、逐一耳元で実況中継してくれたそうです。

キング夫人は男性と結婚していましたが、とある女性美容師と恋に落ちます(映画ではそういう描写でした)。その時のシーンを、監督みずからが解説するクリップがニューヨークタイムズのサイトに上がってます。鏡の前に腰掛けたキングと美容師さん(マリリン)をアップで映し、さらにサウンドも、ふたりが親密さを感じるに従い「ワイド」から「クローズアップ」へと変化していきます(つまり周囲の音が聞こえなくなる)。髪を切るはさみの音は、”autonomous sensory meridian response”(A.S.M.R.)の効果があるそうです。ウィキペディアによれば、ASMRは「人が聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良い、頭がゾワゾワするといった反応・感覚(正式な・あるいは一般的な日本語訳は今のところ存在しない)」なのだとか。

🎾両監督による美容室シーン解説クリップ

ホテルのバスルームに無造作におかれたブラジャーを見て、妻が女性と不倫をしていることに夫のラリー・キングが気づくのですが、よくそれでわかったなあ、と一緒に観ただんなともども感心してしまいました。ラリーはすごくかいがいしくビリー・ジーンの世話を焼いてあげていました。ビリー・ジーンのライバル、マーガレット・コート夫人のだんなもそんな感じに描かれ、どちらも一家の大黒柱が女性であったことを、テーマに絡めて匂わせています。

レビューはひとつだけ、”What the Flick!?”のクリップを見ましたが、リッグスをスティーヴ・カレルに演じさせて、好感を持てる人物として描いた点を批判していました。それからキング夫人像が弱いとも。わたしはそうは思いませんでしたが、こういうところは本当に人それぞれですね。試合前に、キング夫人がリッグスに贈呈したブタさん、どうなったのかなあ。

ニコロデオン映画館に来た
ジョナサ・・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督夫妻

サンタクルーズの小さな映画館Nickel Odeonで、夜9時45分の回を見ました。実はこの日、なぜか両監督が映画館に来て上映後にQ&Aをやったのです。7時の回は売り切れだったのでその次のにしたら、上映前にちょっとだけおふたりがMCして、それで終わりでした。映画館のサイトにはこの回もQ&Aって出てたのに…。監督が来たわけは、お父さんがサンタに住んでらした(昨年他界)からですって。『リトル・ミス・サンシャイン』の頃から、お父さんはどこへでも映画のTシャツを着て出かけて、「この映画観たかね? 娘が撮ったんじゃ」とひとり宣伝マンしたおかげで、サンタでの同映画人気は上々だったとか。

🎾監督来館を告げる地元紙

上映前、トイレで7時の回に観た人とこれから観る人がしゃべっていて(みなさんご年配)、「わたし当時の試合見てた!」っていう人とか、試合結果をしゃべったあと、相手に「わたしこれから観るのよー」と言われて謝ってた人とか、すごく話に花が咲いていました。Q&A面白かったんだろうなあ。もっと早くチケット買っておけばよかった。

映画タイトルである「男と女の闘い」ですが、これは今でも続いていますね。ついこの間、ヴィーナス・ウィリアムズ(セリーナだっけ?)が、やはり女性のテニス選手が男性のテニス選手よりも賞金額が少なかったりスケジュールが不利だと発言して、協会コミッショナーだか誰だかが「客を呼べるのは男性選手だから」みたいな、劇中のビル・プルマン(本作のヴィランはリッグスじゃなくてこっちの人)とおんなじようなこと言ってましたよね。それから、ハーヴェイ・ワイアスティンに始まりエンタメ界、スポーツ界、政界etc.へと飛び火し全米を揺るがしている(17年10月現在)セクハラ問題しかり。battle of the sexesは、永遠の命題かもしれません。

エマ・ストーンのキング夫人、なかなかどうしてよかったです。他に、キングのマネージャー役でコメディアンのサラ・シルヴァーマン、リッグスをカモにする栄養剤セールスマンにフレッド・アーミセン(❤️)、リッグスの妻役でエリザベス・シュー、キング夫人にゲイの立場からサポートするスタイリスト役でアラン・カミングスが出ています。なかなかバラエティに富んでますね。日本公開は未定、かな?

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